【イギリス】中央政府の新政策、地方政府の化石燃料ダイベストメントを妨げる懸念 2016/04/17 最新ニュース

liverpool

 気候変動やサステナビリティの分野で先陣を切っていると思われたイギリスが揺れている。政府が昨年10月に方針発表し、今年2月に策定した政府調達基準ガイダンスが、地方政府が進める化石燃料からのダイベストメントを中央政府が禁止するという事態になりかねないと懸念されているためだ。

 昨年10月3日、与党保守党が物議を醸すプレスリリースを発表した。地方政府が実施する不買運動、ダイベストメント(投融資撤退)、制裁(合わせてBDSを呼ばれる)は、中央政府が制裁、禁輸措置、規制を実施する対象にしか認められないという内容だ。同様に、地方政府の調達基準においても、中央政府が掲げる政策以外のものを除外することは認められないという方針も発表した。これらの発表はあくまで保守党の政策を発表したにすぎないが、与党はこれらをコミュニティ・地方自治省を通じて正式な法規制をすることを目指すと宣言したのだ。

 背景には、中央政府のイスラエル政策にある。イスラエル政府がパレスチナへの入植を進めることに異を唱えるイギリスの地方政府は多く、地方政府主導でのイスラエル製品不買運動などが数多く展開されてきた。保守党の方針は、地方政府、国民保険サービス(NHS:イギリスの国営医療サービス事業者)トラスト、公共機関が独自にイスラエル製品をボイコットするのを禁じることを狙ったものだ。特定の国の製品や調達の排除は世界貿易機関(WTO)加盟国の政府間調達合意に反するものであり、さらにイスラエル製品を対象とした場合は反ユダヤ主義の論争に発展する可能性があることに言及していた。

 そして宣言通りに2月17日、コミュニティ・地方自治省と内閣府は「Procurement Policy Note: Ensuring compliance with wider international obligations when letting public contracts」という文書を発表、地方政府の調達基準において中央政府が制裁、禁輸措置、規制する以外のものからの購買を禁止することを禁止することを正式に発表した。根拠とし、WTO政府調達協定やEU調達指令を挙げた。また、政府は今年中に不買運動、ダイベストメント(投融資撤退)、制裁(合わせてBDSを呼ばれる)に関する正式ガイダンスも発表すると述べてもいる。政府の報道官は、「地方政府は、年金や調達に関する政策において、独自のボイコットや制裁を行ってはならない。我々は自治体に対し、納税者と国家の利益が保護されるようなルールを喚起している」とも述べている。

 現在、中央政府は化石燃料からのダイベストメントを政策として掲げていない。そのため、ダイベストメントに関する新たな正式ガイダンスが発表されると、地方政府や地方政府が管轄する年金基金は、化石燃料ダイベストメントを止めざるを得なくなる。そのため専門家らは化石燃料ダイベストメントを妨げる中央政府の方針には激しい非難を寄せている。専門家らは、キャメロン首相が昨年12月のパリ協定に参加し、今世紀末には温室効果ガス排出量をネットゼロとする目標を掲げており、地方政府が気候変動対策に取り組むことを妨げるのは合理的ではないということ。また、イングランド銀行のMark Carney総裁氏は化石燃料への投資を座礁資産として警告しており、化石燃料からのダイベストメントは財務リターンの観点からも正統化されなければならないという説明もなされている。野党労働党報道官は「地方自治における民主主義への冒涜」と非難、法律専門家も法廷闘争に持ち込む可能性を指摘している。地方政府も反対の声を挙げている。

【参照ページ】Conservative plans to block ethical investments and procurement
【参照ページ】UK councils warned of ‘severe penalties’ of fossil fuel divestment
【参照ページ】Councils and NHS trusts to be blocked from boycotting Israeli products
【調達ガイダンス】Procurement Policy Note: Ensuring compliance with wider international obligations when letting public contracts
【内閣府公報】Putting a stop to public procurement boycotts

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る