3月29日、全米から25州・準州の司法長官がニューヨークに集結した。呼びかけたのは、ニューヨーク州のEric T. Schneiderman司法長官と、バーモント州のWilliam Sorrell司法長官。議題は気候変動だ。この会合には、元米副大統領で現在環境NGOのClimate Reality Project議長を務めるアル・ゴア氏も招かれ、17州・準州の司法長官が連合体「AGs United for Clean Power」を形成、協働して連邦政府や企業に対して気候変動対策を求めていく行動を発表した。連邦政府ではなく、州政府から動きであることに、さらに大きな注目が集まっている。
今年2月、米連邦最高裁判所が、オバマ政権が大気浄化法(Clean Air Act)に基づいて定めた「クリーン電力計画」に対して執行停止命令を出した。クリーン電力計画とは、発電所からの温室効果ガス排出量を2030年までに2005年比で30%減らすという目標を掲げ、石炭や天然ガス火力発電から再生可能エネルギーへのシフトを促進するという計画、昨年8月に始動していた。この法律は、連邦政府が州政府に対して温室効果ガス削減計画を2018年までに提出するよう強制し、州政府が提出しない場合は連邦政府が州政府に変って計画立案と実行を行うという協力な内容を有している。オバマ政権はこの法律を、パリ会議でコミットメントした「温室効果ガスを2005年比で2025年までに26〜28%削減」達成への切り札にしようとしていた。しかし、ウェストバージニア州などから反対が噴出し、州政府が連邦政府を連邦最高裁判所に訴えるという事態に発展、同時にエネルギー関連企業からも反対が出ていた。2月、最高裁判所はこの法律は合衆国憲法の規定を超えた越権行為に当たるとして、執行停止命令を出した。判決は、9人いる連邦最高裁判事のうち、5人が反対、4人が賛成という僅差だった。
今回「AGs United for Clean Power」に参加したのは、カリフォルニア州、コネチカット州、コロンビア特別行政区、イリノイ州、アイオワ州、メイン州、マリーランド州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ニューメキシコ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、ヴァージニア州、バーモント州、ワシントン州、米領ヴァージン諸島の17州・準州の司法長官。司法長官の権限は州ごとに異なるが、多くは州では州法務大臣、州検事総長などの権限を担っている。各州は今後協力して、温室効果ガス削減に向け連邦政府の大気浄化法(Clean Air Act)実行をサポートするとともに、エネルギー関連企業に対して気候変動が与える業績インパクトの開示を求めるとともに、過去の開示情報に偽証がなかったかどうか調査を進めていく。すでに、ニューヨーク州はエクソンモービル社に対する調査を開始しているが、この動きに各州が参戦してくる可能性が高い。同様にニューヨーク州は全米最大の石炭採掘事業者であるPeaboy社が過去に開示情報を偽っていたとの嫌疑で調査を進めていた(石炭価格の低迷に喘いでいた同社は、4月13日チャプター11条を申請し、倒産した。)
【参照ページ】A.G. Schneiderman, Former Vice President Al Gore And A Coalition Of Attorneys General From Across The Country Announce Historic State-Based Effort To Combat Climate Change
【参照ページ】AL GORE AND NEW YORK ATTORNEY GENERAL ERIC SCHNEIDERMAN LAUNCH AGS UNITED FOR CLEAN POWER COALITION
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