ELTI(European Long-Term Investors Association)の「欧州での社会インフラ投資に関するハイレベル・タスクフォース(HLTF)」とEU欧州委員会経済・金融総局は1月23日、EU域内の社会インフラ投資促進に向けた最終報告書「Boosting Investment in Social Infrastructure in Europe」を公表した。ELTIは、欧州委員会、欧州投資銀行(EIB)、欧州評議会開発銀行(CEB)の他、多くの政府系開発銀行とNGO、専門家等で構成。2017年2月に始動した。
ELTIのミッションは、教育、健康、住宅分野に長期的で柔軟な投資を目的とし、政府及び民間投資を加速化させるための課題と提言をまとめること。同報告書は、社会インフラ投資の需給ギャップは、少なくとも年間1,000から1,500億ユーロ(約20兆円)。2018年から2030年の合計では1兆5,000億ユーロ以上となると算定した。リーマンショック以降、EUの社会インフラ投資は低調で、2016年の欧州でのインフラへの投資は、2007年比で20%低下した。なかでも社会インフラ投資はさらに停滞している。需給ギャップには地域差があるが、背景には社会インフラ分野は地方政府の責務とされることが多く、予算制約が大きいためとした。一方、所得格差は過去30年間で最大となっており、社会インフラ投資の必要性はますます高まっている。
社会インフラ投資には投資の面でも課題が多い。社会インフラ分野は基本的にサービス業のため、投資リターンは事業キャッシュフローに依存する。さらに売上の多くは政府支出に依存することが多い。また1件当たりの投資額も小さく、投資管理コストがかさみやすい。一方、同報告書は、社会インフラ投資のメリットにも注目した。政府支出は事前の取り決めで決定することが多く、長期的な予見性が立ちやすい。また、他の投資アセットとの相関性が低いため、リスク分散効果を期待できる。また、少額となる社会インフラ投資を中間団体がとりまとめ一つの金融商品とすることで、大手機関投資家が投資しやすい状況を創り出せるとした。
今後に向けた提言として、社会インフラ投資への税優遇、ラベリングによる投資促進、ソーシャルボンド等の投資商品開発、中期投資の官民ファンド設立、国・地方政府の政策金融機関の役割強化、当局によるインフラ不足リスクの定量評価等を挙げた。
【レポート】Boosting Investment in Social Infrastructure in Europe
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