オランダ中央銀行のオランダ銀行(DNB)は10月8日、オランダ国内にある銀行、保険会社、年金基金を対象とした気候変動ストレステストの結果を発表した。気候変動は、金融機関の財務状況に影響を与える懸念が高まっており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)も金融機関にシステミックリスクを調査するよう求めている。オランダ銀行は、今回のストレステストの結果として、気候変動によるエネルギー転換がもたらす財務影響を大きいが、金融機関が早めに考慮に入れた経営を行うことで管理可能だと結論づけた。
今回のストレステストの対象となったのは、同国内の銀行、保険会社、年金基金。運用資産は、銀行が9,700億ユーロ(約126兆円)、保険会社が2,190億ユーロ(約28兆円)、年金基金が1兆670億ユーロ(約138兆円)で、合計2兆2,560億ユーロ(約293兆円)。中央銀行は、すでに各アセットオーナーの投資運用ポートフォリオの個別構成銘柄まで把握しており、今回、株式と債券、融資について各セクターへのエクスポージャーを全て分析した。
オランダ銀行が、今回ストリステストに用いたシナリオは全部で4つ。まず、各国政府が二酸化炭素排出量削減に向け厳しい政策を導入する「政策ショックシナリオ」。2つ目は、再生可能エネルギー技術が大きく進展しエネルギー転換が急速に進む「技術ショックシナリオ」。そして、双方のショックが同時に発生する「ダブルショックシナリオ」。最後が、政策や技術動向の見通しが不透明になり、消費抑制、投資抑制、企業設備投資抑制が発生する「自信ショックリスク」。
(出所)DNB
シナリオを基に分析した結果、気候変動の影響を受けやすいセクターは、資源採掘・石油化学、電力、製造業、輸送と特定。この4セクターへのエクスポージャーを調べたところ、銀行、保険会社、年金基金ともにエクスポージャーはすでに小さくなっていた。しかし4つのシナリオでの今後5年間の影響は、4セクターへの影響だけでなく経済全体に及ぶため、大規模な投融資損失をもたらすことがわかった。損失規模は、銀行が3%、保険会社が11%、年金基金が10%。しかし早めに損失規模を考慮した経営を行うことで、管理可能だと表明した。また、政府当局としても、今後の予見性を高める支援をすることで、金融機関の管理能力を高めることができるとした。
【ストレステスト】An energy transition risk stress test for the financial system of the Netherlands
【補足資料】Modelling the energy transition risk stress test
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