オーストラリアのスコット・モリソン首相とメリッサ・プライス環境相は2月25日、パリ協定の下で設定した自主的削減目標(NDC)達成に向け、合計35億豪ドル(約2,770億円)の「気候ソリューション・パッケージ」を発表した。オーストラリアでは5月末に総選挙があり、自由党、自由国民党、国民党で構成する与党・保守連合が新たな政策を打ち出した。モリソン政権誕生時には、国内産業育成の観点から、二酸化炭素排出量削減に後ろ向きとも囁かれたが、今回大規模な政策が飛び出した。
今回のパッケージは、環境・エネルギー省の「排出削減基金(ERF)」を「気候ソリューション基金(CSF)」に衣替えし、同基金を通じて新たに20億豪ドル(約1,580億円)を投下すること等が柱。
排出削減基金は2014年に設立。企業、地主、州政府等が二酸化炭素排出量削減プロジェクトを実施した際に、オーストラリア・カーボンクレジット(ACCU)を発行でき、同基金が買い取ってカーボンオフセットしたい他の企業に販売するスキーム。これまでに省エネ、廃棄物マネジメント、緑化、家畜マネジメント、サバンナ火災マネジメント等で770プロジェクトがACCUを発行。25.5億豪ドル(約2,020億円)を支払い、1.93億tの二酸化炭素排出量削減効果を生み出してきた。
今回の気候ソリューション基金は、同じスキームを用いて20億豪ドルを農家、地主、企業のプロジェクトに支払い、1.03億tの二酸化炭素排出量削減効果を創出しに行く。残り15億豪ドルは、スノーウィー山脈水力発電拡張計画「Snowy 2.0」、タスマニア州で水力・風力発電を強化しビクトリア州に送電するプロジェクト「Marinus Link」、住宅及びオフィスのグリーンビルディング化による省エネ、地域社会の気候変動緩和策への支援。
オーストラリアのNDCは2030年までに2005年比二酸化炭素排出量26%から28%減。一部からは、達成のためには今回の発表内容では不十分で、カーボンプライシング(炭素価格制度)等の強力な策を打ち出すべきだとの声も出ている。
【参照ページ】MEETING OUR CLIMATE COMMITMENTS WITHOUT WRECKING THE ECONOMY
【参照ページ】Meeting Our Climate Commitments Without Wrecking the Economy
【参照ページ】Climate Solutions Package
【参照ページ】Climate Solutions Fund - Emissions Reduction Fund
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