イタリア銀行大手ウニクレディトは11月26日、長期的なサステナビリティへのコミットメントとして、新たなESG目標を発表した。自社での二酸化炭素排出量を80%削減するとともに、化石燃料へのファイナンスポリシーを大幅に厳しくした。社会インパクトを出す分野へのファイナンス目標も設定した。
今回の新目標では、低炭素経済への移行を進めるため、2023年までに一般炭(石炭)採掘プロジェクトへの融資残高をゼロにする。また、新規の一般炭採掘及び石炭火力発電所プロジェクトへの融資も禁止した。一般炭採掘や石炭火力発電所の売上比率が高い既存融資先企業に対しても、脱石炭を促す。
石油・ガスに対しては、北極海での原油採掘、北極海でのオフショアガス採掘、シェールガス採掘、シェールオイル採掘と、水圧破砕法やオイルサンド、深海底での原油・ガス開発に関するプロジェクトへのファイナンスを全面禁止。さらに、同分野からの売上割合が25%を超える企業へのコーポレートファイナンスも禁止した。
その一方、2023年までに再生可能エネルギー・セクターへの融資残高を25%増加。西欧地域の中小企業への省エネローンを34%増、西欧地域での個人向けの省エネローンを25%増、中・東欧地域への省エネ新規ローンを全体の6%以上にまで引き上げる。
さらに、グリーンボンドやESG連動ローンの事業でも2023年までに欧州・中東・アフリカ地域で業界トップ5入を目指す。そのため、「サステナブルファイナンス・アドバイザリー・チーム」を新設し、組織の専門性と機動力を強化した。融資先企業への低炭素移行を支援するため、国連責任投資原則(PRI)と金融業界の気候変動対応を促す国際イニシアチブ2° Investing Initiative(2°ii)が開発した「PACTA Tool」を基に、現在他のグローバル銀行と共同で融資ポートフォリオの低炭素度を測定するメソドロジーも開発中。
【参考】【国際】PRIと2°ii、投資ポートフォリオの気候変動移行リスク評価ツール最新版を発表(2018年9月4日)
自社事業の二酸化炭素排出量は、2020年までに2008年比60%減、2030年までに同80%減を目標として設定した。また、イタリア、ドイツ、オーストリアでのオフィス消費電力をすべて2023年までに再生可能エネルギーを現行の78%から100%にまで高める。オフィス内での使い捨てペットボトルも2023年までに全廃し、再利用可能な金属製のカップに切り替える。紙消費量も削減するため、保管書類のデジタル化も推進。2018年だけで900万書類のデジタル化を実現した。
気候変動での社内意見募集では、気候変動等の環境分野に関心の高いミレニアル世代の従業員で構成する委員会「ミレニアル・ボード」を新設。同委員会は、ウニクレディト・グループの経営陣の全面サポートの下で、グループ全体の環境施策のレビューと監督を行う。
社会的インパクト分野では、イタリア国内ではすでえに、ソーシャルビジネスや零細企業、スタートアップ受けに1億ユーロの融資を実現。今回新たに、取組をさらに11ヵ国でも展開し、融資額を10億ユーロにまで10倍に増やす。芸術家振興も進めており、同社が所有で多くが倉庫に眠っている美術品314点を今後2年間で売却し、同数の美術品を新たな芸術家の作品を購入。その他の社会関連イニシアチブも支援する。
従業員ダイバーシティでは、欧州銀行業界で進める「ダイバーシティ&インクルージョン」イニシアチブに参加し、今後女性やマイノリティに対する具体的な目標を設定していく。ダイバーシティ&インクルージョンを高める意義については、従業員のモチベーション向上、リスク低減、利益率向上、イノベーション等を上げた。
同社は現在、FTSE RussellのESG評価で、最高位の5.0を取得。今後も、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、国連責任銀行原則(PRB)、経済協力開発機構(OECD)の「Business for Inclusive Growth(B4IG)」等の国際合意に参画し、第三者評価を積極的に受けていく考えも示した。
【参照ページ】UniCredit announces new ESG targets as part of a long-term commitment to sustainability: Do the right thing!
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