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【国際】IRENA、水素によるエネルギー転換の地政学的リスク報告書発表。グリーン水素主軸

 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は1月15日、水素市場の成長によるエネルギー転換の地政学的リスクをまとめた報告書を発表した。

 本報告書は、クリーン水素バリューチェーンの発展がもたらす地政学的な要因と潜在的な影響について説明したもの。2050年までのクリーン水素市場の成長とそれに伴う様々な観点での変化を予測し、地政学的リスクと考察を示した。

 IRENAの1.5℃シナリオでは、2050年までに最終エネルギー消費の最大12%をクリーン水素で賄うことを想定している。このうち約3分の2はグリーン水素であり、残りはブルー水素で賄われる見込み。

 2050年までに低コスト(1.5米ドル/kg 以下)でグリーン水素を製造する技術的可能性が高い地域は、アフリカ、北米・中南米、中東、オセアニア。欧州、北東アジア、東南アジアはグリーン水素を生産する資源が少ないと見られている。

 本報告書の予想では、2020年代は技術の主導権を争うことになる。需要が本格化するのは2030年代半ばとされおり、その頃にはグリーン水素は、コスト面でブルー水素と競合し始めると予測されている。中国、ブラジル、インド等ではコスト競合がさらに早く実現する見通し。

 2030年代には、グリーン水素のコスト競争力に合わせて、水素の国境を越えた取引も増加する。IRENAは、2050年に生産されるグリーン水素の3分の2が周辺地域で使用され、3分の1が国境を越えて取引されると想定。天然ガスパイプラインを含むパイプラインは、この取引の半分を促進され、残りの半分は水素の誘導体、特にアンモニアとして船に積まれることになると予測している。

 同報告書によれば、水素の生産と利用を基盤とした新しい地政学的影響力が出現するとのこと。水素は多くの一次エネルギー源から、世界中の様々な場所で製造することができるため、少数の国に依存する可能性は少ない。そのため、エネルギー貿易の地理を変え、エネルギー関係が地域化すると見ており、石油やガスのように、武器化、カルテル化することはないと見立てている。

 一方で、特に水素貿易の初期には、供給者の数が限られており、どちらか一方が契約不履行に陥る危険性のある二国間協定によって形成される可能性が高いとした。水素が最良の代替品であることが明確な需要の高い用途に優先的に取り組むことが、費用対効果に優れ、新興市場につきもののリスクの影響を受けにくくなるとのこと。

 優先順位の高い取り組みの一例として、精製、アンモニアやメタノールの生産など、すでに水素が使用されている産業用途においてグリーン水素への移行を支援することを挙げた。

 同時にグリーン水素の無計画な使用は、エネルギー転換を遅らせ、より化石燃料の割合が高い電力ミックスに引き戻す可能性があると指摘。再生可能エネルギー由来の電力の使用用途は、グリーン水素の生産に転用する前に、慎重に検討すべきとした。

 地政学的リスクを軽減する他の方法として、不必要な最終エネルギー消費を削減することを挙げた。本質的に持続可能な産業への転換を図るには、単にエネルギー源を切り替えるだけでなく、公平かつ公正にエネルギーを効率的に利用する方法を開発することが必要であるとした。

 そのためには、不必要な最終エネルギー消費を削減し、継続的に消費を増やすことを前提とした現在のシステムを変える必要があるという。これは、水素生産のために必要な原料を特定の国に依存するリスクを軽減することに役立つとし、長期的な材料の安全保障に不可欠であるとした。

 また、発展途上国における再生可能エネルギーとグリーン水素の推進を支援することも、地政学的リスクを軽減するために有効とした。将来の水素輸入国は、地政学的安定と公正なエネルギー転換のために、再生可能エネルギーが豊富な途上国が、現地でバリューチェーンや雇用を創出するグリーン産業を立ち上げられるようにすることで、水素経済の多様化を促進する必要がある。そのために、技術、トレーニング、能力開発、資金面での支援が必要不可欠だとした。

 同報告書では、クリーン水素は、地政学的な安定に貢献する可能性があるとしつつ、水素戦略によって化石燃料の需要と供給が長期化し、エネルギー効率と電化が阻害されれば、化石燃料を通じた排出量が続く「カーボンロックイン」のリスクがあるとした。

 クリーン水素市場の成功は、グローバルな首尾一貫した透明性のあるルール、基準、規範を設定できるかどうかにかかっている。これらの形成は、地政学的な競争の場となりうるが、強力な国際協力と建設的な政治的・経済的関与によって、多くのものを得ることができるとした。

 同時に、2030アジェンダやSDGsで設定されている世界的な脅威と脆弱性の多次元的な性質をより深く理解することの重要性を示した。水素生産に必要な水は、水素経済の発展の障害としては認識されてはいないが、気候変動は、有望な水素製造場所と考えられている場所での水リスクを増大させている。あらゆるリスクへの多面的な理解が、水素の大規模な展開に伴う特定のリスクを予見し、回避することが可能になるとした。

【参照ページ】Hydrogen Economy Hints at New Global Power Dynamics
【参照ページ】Geopolitics of the Energy Transformation: The Hydrogen Factor
【画像】IRENA

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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