【アメリカ】バイデン大統領、量子コンピューティングに関する大統領令に署名。イノベーション、サイバーセキュリティ対策

　米ジョー・バイデン大統領は5月4日、量子情報科学（QIS）分野のイノベーションを促進し、量子コンピュータの進化に伴うサイバーセキュリティ上のリスクに対処することを指示する2つの大統領令に署名した。

　今回の発表では、まず、最先端技術であるQIS分野のイノベーションを加速させるため、全米量子イニシアチブ諮問委員会（NQIAC）を強化する。NQIACは2020年7月に設立され、QIS分野の現在の傾向と今後の展望について評価を行い、各機関に助言を行う組織。今回の大統領令により、NQIACは大統領直轄組織となり、一般市民を含むあらゆる国民に対し、QISに関する最新の正しい情報を発信し、政策の意思決定も改善。米国の技術的優位性を高めることにコミットする。

　次に、量子コンピュータの進化に伴うサイバーセキュリティ上のリスクに対処するため、国家安全保障に関する対応を指示した。量子コンピュータの高度化が進むことで、近い将来、現在のインターネット上のデジタル通信を保護する暗号が解読されてしまう。これに対処するため、米国標準技術研究所（NIST）は将来起こりうる攻撃からデジタル通信の保護が可能な標準化した新しい耐量子暗号技術を発表する予定。

　また、QISに関する人材開発の推進、国内外の政府機関、民間企業等とパートナーシップを締結することを推奨した。NISTの「国家サイバーセキュリティ・エクセレンス・センター」内に、次世代量子暗号化プロジェクトを立ち上げ、官民の連携を強化しながら研究を進めていく計画。

　さらに、耐量子暗号技術への移行対象のシステムを持つ組織に対してロードマップとマイルストーンを提供することで、適切なサポートが受けられるようにする。同技術の研究成果や知的財産権を保護し、国際競争力を確立するための包括的な計画も策定する。

　【参照ページ】FACT SHEET: President Biden Announces Two Presidential Directives Advancing Quantum Technologies

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所