国連食糧農業機関(FAO)と経済協力開発機構(OECD)は6月29日、2031年までの農業・食料の見通しを示した最新報告書「OECD-FAO農業見通し2022-2031」を発行した。世界の農業・食料システムは、人口増加による食料需要増加、気候変動の影響、ウクライナ戦争に伴う経済的影響と食糧供給の途絶といった基本課題に直面していると警鐘を鳴らした。
今回の見通しでは、世界の食料消費は、人口増加により、2031年までに年間1.4%上昇。先進国では人口増加の鈍化と消費の飽和により消費は横ばいだが、主に発展途上国で増える。一方、世界の農業生産量は年1.1%増加し、同様に発展途上国で増加。しかし、需要の伸びに生産の伸びが追いつかず、すでに2030年までに飢餓ゼロを達成するための食糧増産は難しい状況がみえてきている。
気候変動の影響では、農業・畜産からの直接的な二酸化炭素排出量は、2031年までにで6%増加。その増加分の90%は畜産が占める。しかし、農業・畜産からの排出量は、収量向上と反芻動物家畜の生産割合の減少により、原単位排出量は下がっていく見通し。農業分野での二酸化炭素排出量削減では、気候スマート畜産の手法や技術を特に畜産部門で大規模に導入してく必要があるとした。欧州・中央アジアでは、排出総量が減少に転じると見立てた。
同報告書は、世界の食料流通はグローバル規模で形成されていることを念頭に、食糧安全保障に対する短期的・中期的な課題に対処するためには、世界の貿易と市場が十分に機能することが不可欠とした。主要な農産物および加工品の貿易は、今後10年間で生産量に見合った成長を遂げると予測した。そのため、透明で予測可能で、ルールに基づいた多国間貿易システムの重要性を強調した。
足元の状況では、新型コロナウイルス・パンデミック、主要生産国での天候不順に加え、ロシアのウクライナ戦争により、農産物価格は上昇しており、さらに、肥料のロシア依存が高いことから、肥料価格の上昇、さらには短期的な生産性減少の懸念が増大しているとした。エネルギーや肥料などの農業投入財の価格上昇が長引いた場合、生産コストが上昇し、今後数年間の生産性と生産高の伸びを抑制する可能性があるとした。
特に、小麦に関しては、ウクライナが輸出能力を完全に失った場合、均衡価格は紛争前の水準より19%上昇。さらにロシアの輸出量が通常の50%にまで下がった場合には、34%も高くなる可能性があるとした。
【参照ページ】Heads of OECD and FAO emphasise the importance of peace and transforming agrifood systems for guaranteeing access to food for the world’s poorest
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