英人権NGOのKnowTheChainは1月10日、情報通信(ICT)業界の強制労働問題への対応状況を評価した2022年版ランキング「2022 Information and Communications Technology Benchmark」を発表した。世界上位60社が対象。自社対応だけでなくサプライチェーンでの取組も大きな評価項目となった。同ランキングは2016年と2018年、2020年にも実施され、今回が4回目。
【参考】【国際】KnowTheChain、ICT大手49の強制労働対応ランキング2020。日本企業は順位下げ低迷(2020年6月9日)
評価対象となった企業は、アップル、インテル、HP、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、サムスン電子、TSMC(台湾集積回路製造)、鴻海科技集団(フォックスコン)、テキサス・インスツルメンツ、マイクロン・テクノロジー、NVIDIA、アプライド・マテリアルズ、ASMLホールディングス、SKハイニックス、シスコ・システムズ、マイクロソフト、クアルコム、エクリソン、ブロードコム、ノキア、ウォルマート、アマゾン、京東方科技集団(BOE)等。日本企業では、日立製作所、パナソニック、ソニーグループ、キヤノン、東京エレクトロン、任天堂、村田製作所、京セラ、富士フイルムホールディングス、キーエンスの10社が対象となった。
評価は、「コミットメントとガバナンス」「トレーサビリティとリスクアセスメント」「調達慣行」「人材採用」「労働者の声」「モニタリング」「救済メカニズム」の7つの観点で実施している。
(出所)KnowTheChain
首位は、2年連続でヒューレット・パッカード・エンタープライズ。2位はインテル、3位はシスコシステムズ。4位がアップルで、上位4社は50点を超えた。それ以降は、HP、サムスン電子、エリクソン、アマゾン、カミング、NXPセミコンダクターズの順。
今回は、対象企業が11社増えたこともあり、全体傾向は中央値で14と低い。大半の企業が、サプライチェーンにおける強制労働のリスクやインパクトに対処するための効果的なデューデリジェンス、あるいは労働者に実質的な変化をもたらす適切な措置の実施を示していなかった。項目別では「調達慣行」「労働者の声」が非常に低い。また、前回全ての企業で0点だった結社の自由では、首位のヒューレット・パッカード・エンタープライズが大幅な開示を実施。アップルとインテルの事例にも言及されている。
日本企業10社の中央値は11と大きく低迷した。昨年18位だったソニーグループは21位に後退したが、これでも日本企業最高位。ほかは28位のLG電子にも全て負けた。東京エレクトロン30位、村田製作所33位、キヤノン36位、日立製作所39位、任天堂44位、富士フイルムホールディングス46位、パナソニック47位、キーエンス48位、京セラ56位。
日本企業は、人権デューデリジェンスの実践の観点では大幅に改善したが、責任ある調達行動に関する情報の開示ができている企業はゼロ。自らの行動がサプライチェーンにおける労働権侵害に寄与する仕組みを買い手がいまだに十分考慮していない実態が示されたという。労働者の声の平均も5点だった。
KnowTheChainは今回、次回に向けた提言も発表。調達慣行では、一次サプライヤーに対し、計画、見通し、人件費の確保を含む責任ある調達行動を採用することや、すべての一次サプライヤーに関連する責任ある調達行動について、数年間に及ぶ対前年比のデータポイントを公表することを求めた。
労働者の声については、サプライヤーの労働者とその代表が効果的な苦情処理メカニズムを利用できるようにすることや、メカニズムの運用状況やサプライヤーの労働者やその代表による利用状況に関するデータを開示して、実効性を証明することを求めた。また、労働協約の適用対象である労働者の割合の対前年比データの開示、労働者にとっての具体的な成果の事例を開示等の証拠提示も求めた。
【参照ページ】2022 Information and Communications Technology
【参照ページ】2022年KnowTheChain情報通信技術(ICT)部門ベンチマーク
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