英人権NGOのKnowTheChainは6月8日、情報通信(ICT)業界の強制労働問題への対応状況を評価した2020年ランキング「2020 Information and Communications Technology Benchmark」を発表した。世界上位49社が対象。自社対応だけでなくサプライチェーンでの取組も大きな評価項目となった。同ランキングは2016年と2018年にも実施され、今回が3回目。
【参考】【国際】KnowTheChain、ICT40社の強制労働対応ランキング2018発表。日本企業7社平均以下(2018年6月24日)
評価対象となった企業は、アップル、インテル、HP、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、サムスン電子、TSMC(台湾集積回路製造)、鴻海科技集団(フォックスコン)、テキサス・インスツルメンツ、マイクロン・テクノロジー、NVIDIA、アプライド・マテリアルズ、ASMLホールディングス、SKハイニックス、シスコ・システムズ、マイクロソフト、クアルコム、エクリソン、ブロードコム、ノキア、ウォルマート、アマゾン、京東方科技集団(BOE)等。日本企業では、日立製作所、パナソニック、ソニー、キヤノン、東京エレクトロン、任天堂、村田製作所、京セラ、HOYA、キーエンスの10社が対象となった。
評価は、「コミットメントとガバナンス」「トレーサビリティとリスクアセスメント」「調達慣行」「人材採用」「労働者の声」「モニタリング」「救済措置」の7つの観点で実施。
(出所)KnowTheChain
首位はヒューレット・パッカード・エンタープライズ。2位はHP、3位はサムスン電子。前回1位のインテルは4位だった。また、5位はアップル、6位デル、7位マイクロソフト。
全体傾向では、平均点は30。点数が低い項目は、強制労働を撲滅するための項目で、例えば団結権や団体交渉権といった権利の保障については、49社すべてのスコアが0ポイントだった。一方、債務労働につながる斡旋料への対応は進んでおり、36社(73%)がサプライヤーに対し労働者の斡旋料の負担を禁止する(ノー・フィー)方針を掲げ、前回調査から対応企業数は60%増加した。しかし、労働者への斡旋料の払い戻しについて公表している企業は、13社(27%)のみで、そもそも斡旋料の支払いを防ぐための包括的な措置を取っている企業はいなかった。
他方、日本企業は低迷した。日本企業では最高位のソニーが18位。その後には、日立製作所25位、任天堂28位、村田製作所32位、東京エレクトロン33位、キヤノン36位、パナソニック38位、HOYA39位、京セラ40位、キーエンス45位と続いた。ソニーは今年初めて評価対象となり、初戦で日本企業最高位となったが、それでも振るわなかった。他の企業は前回よりも大きく順位を下げた。過去2年間で、日本企業の多くは「人権対応」を進めてきていたが、それ以上に海外企業の改善スピードは早いという現実を突きつけられた形となった。
日本企業は、方針や体制に関する項目のスコアは高かったが、その他の項目については軒並み低かった。10社とも強制労働への対応の意思を示し、サプライヤー規範にも含めているが、結社の自由や団体交渉権を保障する具体的な取り組みをしている企業は1社もなかった。また、7社がサプライチェーンの労 働者が苦情を申し立てるための苦情処理メカニズムを導入、または、サプライヤーに対応を要求しているが、サプライヤーの労働者が実際に申し立てをしていることを示した企業はいなかった。
今回の調査では、ランキングの対象ではなかったが、部分評価を行った企業として、富士フイルムホールディングス、ルネサステクノロジー、シャープの3社にも言及。次回以降、ランキングの対象となってくる可能性がある。
【参照ページ】2020 ICT Overview
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