アジア太平洋経済協力(APEC)加盟21ヶ国首脳は11月17日、米サンフランシスコで開催された首脳会議(サミット)終了後に、「APECゴールデンゲート宣言 - 万人にレジリエントで持続可能な未来の創造」を採択した。
同宣言は、レジリエンス、サステナビリティ、インターコネクション(相互接続性)、イノベーション、インクルージョンの5つを優先事項として掲げ、最も差し迫った経済的課題に対応するために協力する新たな方法に向けて、我々の地域を前進させるものである。
パリ協定の目標を達成するため、様々な経路を通じて、クリーンで持続可能かつ公正で安価で包括的なエネルギー転換を加速させるためのより集中的な努力が必要と認識。そのうえで、再生可能エネルギー設備容量を世界全体で3倍にしていく方向性を確認した。2030年までに国内の状況に合わせ、二酸化炭素削減・除去技術を含むその他のゼロ・低排出技術も推進していくことでも合意した。
持続可能な農業では、画一的なアプローチは存在しないことを認識しつつ、農業食料システムをよりレジリエントで生産的、イノベーティブかつ持続可能なものにするためのロードマップとして、「2030年に向けた食料安全保障ロードマップ」を完全に実施することをコミット。違法・無報告・無規制(IUU)漁業も含め、農林水産資源と漁業の持続可能な資源管理に向けたコミットメントも再確認した。農業・食料システムと気候変動、食料安全保障、栄養との関係を強調するとともに、食料安全保障を達成する上で、農業生産性、国際貿易、食品ロス・食品廃棄の防止・削減が重要とした。
インクルージョンでは、ジェンダー平等の推進と支援を継続するとともに、中小企業、労働力、女性、若者、先住民族、障害者、遠隔地や農村地域の人々等、未開発の経済的潜在力を持つその他のグループの経済インクルージョンとエンパワーメントを進める。特に、グローバルバリューチェーンでのジェンダー平等の促進、女性や女児へのSTEM教育支援、家事労働での不平等な分配等も重点分野に据えた。
インターコネクションでは、実現可能で、包摂的で、開かれた、公正で差別のないデジタル・エコシステムを構築するとのコミットメントを再確認。全ての人にインクルーシブなデジタル経済を促進する「APECインターネット・デジタル経済ロードマップ(AIDER)」の実施に向けた米国の努力を歓迎した。さらに、すべての国で2030年までに男女間のデジタルデバイドを半減することを目標として掲げた。
零細・中小企業(MSME)に関しては、グローバルバリューチェーンへの統合、大企業との協業、デジタルツールやテクノロジーの活用、金融インクルージョンの4つを発展の方策として掲げた。また、MSMEに対し、地域市場や世界市場への進出を支援することも盛り込んだ。
同宣言では、APECビジネス諮問委員会(ABAC)を含むステークホルダーとの関与をさらに強化し、官民対話を増加させることも標榜。
【参考】【国際】APECビジネス諮問委員会、気候変動とAIで特別声明。APEC首脳に対策強化要請(2023年11月18日)
協議が難航している貿易分野では、APECサンフランシスコ原則を、APECゴールデンゲート宣言の附属書として採択した。同原則では、APCEは、通商政策において、サステナビリティとインクルージョンの2つを重要概念として提唱した。また、自主的で拘束力がなく、コンセンサスに基づく組織であることを、APECの強みと位置づけ、オープンなマルチステークホルダー型のアプローチで政策を検討していくとを表明した。
同原則の採択を受け、APEC貿易投資委員会(CTI)が同原則を支援する作業の責任を負うことも決まった。2024年から2028年まで、貿易投資委員会は、貿易投資政策へのサステナビリティとインクルージョンの統合に関する特定の議題項目を含める予定。議題項目の具体的な焦点は、CTI委員長及び議長国が決定する。
【参照ページ】APEC Economic Leaders Jointly Agree to Golden Gate Declaration
【参照ページ】2023 Leaders' Declaration
【参照ページ】San Francisco Principles on Integrating Inclusivity and Sustainability into Trade and Investment Policy
【画像】APEC
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