Skip navigation
サステナビリティ・
ESG金融のニュース
時価総額上位100社の96%が
Sustainable Japanに登録している。その理由は?

【EU】EU理事会と欧州議会、電力市場改革で政治的合意。再エネ導入加速で市場価格変動対策

 EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は12月14日、電力市場設計(EMD)改革に関する一連のEU法改正案で政治的合意に達した。改正対象は、電力規則、電力指令、REMIT規則等。今後双方での立法手続きに入る。

【参考】【EU】欧州委、電力市場改革を提案。PPAやデマンドレスポンス促進。再エネ強化で電気料金引下げ(2023年3月18日)

 欧州委員会が提案した今回の改革の問題意識は、EUで再生可能エネルギーが電力需要の3分の1以上をカバーしているにもかかわらず、ウクライナ戦争後のガス価格高騰により、電気料金が大きく引き上がったという点にある。EUは2030年までに再生可能エネルギーを3倍にする必要があるとみており、再生可能エネルギー導入量をさらに引上げ、電気料金を低く安定できるようにする。

 まず、今回の合意では、消費者にとっての電力契約の選択肢を拡大し、契約を結ぶ前に明確な情報を得ることができるようにする。同時に、ダイナミックプライシング契約も選択できるようになり、価格変動を利用して安いときに電気を使うことができるようになる。これにより、電気自動車(EV)充電や住宅でのヒートポンプの使用等が有利になる。

 さらに、電力供給事業者は、価格高騰や市場価格変動に対処するため、少なくとも固定契約量と同程度の価格リスクを管理することを義務化。脆弱な消費者やエネルギー貧困層は電力の断絶から保護され、加盟国は危機の際に、規制された小売価格を家庭や中小企業にも適用できるようになる。さらに、小売価格が急上昇した場合、欧州委員会は電力価格危機を宣言することをEU理事会に提案する権限を持ち、これによりEU加盟国は顧客を保護し、安価なエネルギーへのアクセスを確保するためのさらなる措置が発動されるようになる。そのため、「エネルギー貧困」の定義も確立していく。

 また、企業や政府機関を含む需要家は、屋根上太陽光発電や付近の風力発電の余剰電力を近隣需要家とシェアする「エネルギーシェアリング」が可能になる。これにより、太陽光発電や風力発電の設備投資を促進。さらにEU加盟国がプラグイン・ミニソーラーシステムを導入することで、消費者による再生可能エネルギーの導入も見越す。

 当局の権限では、エネルギー規制当局協力機構(ACER)と各国の規制当局は、エネルギー市場の整合性と透明性を監視する能力を強化。特に、ACERは、国境を越える性質の潜在的な市場濫用事例や、2ヶ国以上に影響を及ぼす行為を調査できるようになる。調査を実施するために、ACERは立入検査を行い、情報提供の要請を行い、供述を取ることができるようになる。改正REMIT規則の下では、第三国からの市場参加者は、市場参加者が卸売エネルギー市場で活動している加盟国に代表者を指名しなければならなくなる。

 次に、「予測可能なエネルギーコストで競争力のある欧州産業」のため、電力購入契約(PPA)等のより安定した長期契約の導入を促進。EU加盟国は、PPAに対して市場ベースの保証を確保する義務を負うようになる。さらに、将来の価格を固定する長期契約「フォワード契約」の市場の流動性を高め、長期にわたって過度に変動する価格から需要家を保護できるようにする。

 発電事業者の収益性確保では、EU加盟国に対し、インフラ・マージナル要件やマスト・ラン要件を求める再生可能エネルギーおよび低炭素発電の設備容量新設に対するすべての公的支援は、双方向型の差金決済契約(CfD)または同等のスキームを義務化。EU加盟国は、余剰収入を消費者に直接、あるいは価格支持や電力コスト削減のための投資費用を賄うことために還元することが推奨されている。双方向型CfDの適用は、風力発電、太陽光発電、地熱発電、貯水池のない水力発電、原子力発電が対象となる。双方向型CfDに関するルールは、規則改正発効後、3年間の移行期間を経て適用される。

 容量市場については、電力市場のより構造的な要素とすることで合意した。すでに認可されている容量市場制度について、正当な理由がある場合には、二酸化炭素排出制限の適用から例外的に免除する例外規定を導入することでも合意した。

 他には、系統混雑に関する系統運用者の新たな透明性義務や、よりリアルタイムに近い取引期限の制度を導入。また、電力系統の柔軟性を向上させるため、EU加盟国は今後、電力需要を評価し、非化石燃料による柔軟性を高める目標を設定することを義務化。特に需要レスポンスと電力貯蔵に対する新たな支援制度を導入する道も開く。この改革により、系統運用者はピーク時の需要削減が期待できるようになる。

 電力価格変動からの需要家保護では、すでにEU理事会と欧州議会は11月16日、電力卸売市場での相場操縦を防ぐためのEU規則(REMIT)案で政治的合意に達している。

【参考】【EU】欧州委、電力市場改革を提案。PPAやデマンドレスポンス促進。再エネ強化で電気料金引下げ(2023年3月18日)

【参照ページ】Commission welcomes deal on electricity market reform
【参照ページ】Reform of electricity market design: Council and Parliament reach deal

author image

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

この記事のタグ

Sustainable Japanの特長

Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。

  • 時価総額上位100社の96%が登録済
  • 業界第一人者が編集長
  • 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
  • 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする

※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら

"【ランキング】2019年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」"を、お気に入りから削除しました。