
国際資本市場協会(ICMA)は2月14日、債務資本市場におけるトランジションファイナンスに関するソートリーダーシップ・ペーパーを発行した。2020年の「クライメート・トランジションファイナンス・ハンドブック」発行以降の状況を整理し、市場に対し提言を伝えた。
【参考】【国際】ICMA、気候変動移行を資金使途のESG債に追加要件設定。発行体全体の戦略や目標等(2020年12月11日)
日本では、トランジションファイナンスをグリーンファイナンスと区別し、2050年までのカーボンニュートラル(脱炭素)分野を資金使途とするものを「グリーンファイナンス」、低炭素分野を資金使途とするものを「トランジションファイナンス」と定義する傾向がある。しかしICMAは、トランジションファイナンスをグリーンファイナンスの一部と扱っており、グリーンファイナンスの中で、特に排出量の多いセクターでのパリ協定の達成に資する気候変動緩和に関するものを幅広く「トランジションファイナンス」と定義している。
ICMAは今回、サステナブルボンド(ESG債)市場の中で、トランジションボンドに該当するものは0.4%と非常に小さく、サステナビリティ・リンクボンドを入れても3.5%に留まっていることを課題視。背景には、排出量の多くセクターでの適格な「トランジション」に関する基準が確立していないことから、発行体と投資家の双方で「グリーンウォッシュ」をおそれている状況があるとした。
一方、IFRSの国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が定めた「IFRS S2」や欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)で、トランジションプラン(移行計画)策定のルール化が進んでいることを好材料とした。発行体でトランジションプランの策定が進むことで、同計画に基づくファイナンスがトランジションファイナンスの在り方として定着していくとした。特にトランジションプランでは、発行体の自助努力を超えた、政策エンゲージメントやサプライヤーエンゲージメントも包含しているため、サステナビリティ・リンクボンドのSPTで掲げたKPI達成の可能性を引き上げることに資するとした。
ICMAは、今後の方向性として、発行体のトランジションプラン策定をより厳格にルール化していく必要があると認識。IFRS S2やESRSで規定されている要件を、単なる開示レベルにとどめず、企業の戦略アクションにまで高め実施を確保していくことが重要とした。
【参照ページ】ICMA publishes a new paper on transition finance in the debt capital market
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