
国連責任投資原則(PRI)は7月12日、EU欧州議会選挙の結果を受け、声明を発表。右傾化が進んだものの、親EU政党が多数を占めたことで、2019年策定のEUグリーンディール政策は維持させるとの見方を示した。同時に、機関投資家に対し、さらなる牽引を要請した。
【参考】【EU】欧州議会、極右政党が新会派「欧州のための愛国者」結成。84議席で議会第3党に(2024年7月10日)
今回の声明は、7月にベルギーで開催されたPRI及びIIGCCと、政府関係者によるパネルディスカッションの結論を踏まえたものとなっている。極右政党が台頭してきたことで、欧州議会でのEUグリーンディール政策への支持に影響を与えるだろうが、頓挫することはないだろうとの見方を伝えた。また、EU気候法が2021年に制定され2030年のEUの温室効果ガス排出削減目標が55%減に引上げられた後に策定された政策「Fit for 55」では、そこから派生したほぼ全てのEU法が成立済みとなっており、同時に自然再生法も成立済みのことから、大きな懸念はないだろうとした。
一方で、2030年の目標達成に向けEU法に関しては、今後はEU加盟国レベルでの実施が重要になる。さらに現在2040年目標の議論も始まっている。それに伴い、EUでの主な焦点は、競争力と産業政策、安全保障と防衛、地政学的緊張が高まる環境下での経済レジリエンスへと移っていくとした。その結果、公共財への投資や、グリーン技術に熟練した労働力を海外から招く動きにつながりそうだが、反面、EU内での労働者トレーニングを増やすことには、極右政党は反対する可能性があるとした。
続いて、もう一つの優先課題として、生活費や社会的不平等に対する有権者の懸念に対処することを挙げた。市民は、グリーンとソーシャルの双方のトランジションが公平であること、そして自分たちの生活に影響を与える決定に対して発言権を持つことを望んでおり、公正な移行(ジャスト・トランジション)方針がさらに重要となると指摘した。以降に必要な投資は、2030年までに毎年6,200億ユーロ(約11兆円)となるが、そのほとんどは民間投資で賄う必要があるとした。
今後もネットゼロ投資を加速させていくためには、トランジション政策、公的資金、サステナブル・ファイナンスの3つが鍵とした。トランジション政策では、投資家に予見可能性を与えるための2040年に向けたセクター別ロードマップ策定を要請。公的資金では、ブレンデッド・ファイナンス、債務保証、グリーン公共調達、ネットゼロ産業のための主要技術を支援するためのInvestEUのような他の金融手段を挙げた。サステナブル・ファイナンスでは、EU環境タクソノミーを高く評価しつつ、情報開示ルールとの連携を強化することを求めた。
【参照ページ】The EU Green Deal survives the elections but needs more investor support
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく
ログインする
※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら