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【アメリカ】ミシガン大、籾殻灰からハードカーボン発見。バッテリー負極材として大きな期待

 米ミシガン大学は12月6日、同大学での新たな研究により、コメの籾殻灰にハードカーボンが含まれていることを発見したと発表した。リチウムイオンやナトリウムイオンバッテリーの負極在における黒鉛の代替となる安価な国産材料になるという。

 今回の研究は、ミシガン大学のリチャード・レイン材料科学・工学および高分子科学・工学教授らが実施したもの。研究結果は、科学誌「Advanced Sustainable Systems」に11月20日に掲載されている。

 ハードカーボンとは、密度が低く、細孔率が非常に高いことにより、3000℃の高温でも熱処理によって黒鉛(グラファイト)に変化しない固体状の炭素のこと。バッテリーに用いられる炭素系の負極材料には黒鉛、ハードカーボン(易黒鉛化性炭素)、ソフトカーボン(難黒鉛化性炭素)の3つに分かれ、物理的特性が全く異なる。

 リチウムイオンバッテリーでは、主に黒鉛が負極材として使用されているが、ナトリウムイオンバッテリーでは、特性上ハードカーボンが使用されてきており、今後ハードカーボンの需要は大きく高まるとみられている。

 従来、ハードカーボンは、窒素やアルゴン等の酸素を含まない環境で有機廃棄物等のバイオマスを約1200℃まで加熱しなければ作れないと考えられていた。しかし今回、籾殻を材料に、燃焼によって初めてハードカーボンを生成することに成功した。

 具体的には、同研究チームは、以前の研究で、重合分解により、約90%のシリカと10%の炭素を含む籾殻灰からシリカを部分的に除去する方法を実証。除去したシリカは、太陽光発電パネルや半導体で使用される高純度シリコンの原料にもなる。シリカが除去された籾殻灰は、60%から70%を炭素が占めるが、X線を照射して得られるパターンから、形が定まらずに無秩序な状態であると考えられていた。

 しかし、今回の研究では、分光学の技術により、非晶質炭素のマトリックス内にナノスケールで存在する黒鉛の小さな島々があることを特定し、ハードカーボンに該当することを特定。籾殻灰から得られたハードカーボンの電気化学的特性をテストしたところ、リチウムイオンバッテリーの負極として、市販のハードカーボンや黒鉛を大幅に上回る性能を示した。

 米国では現在、バッテリー負極材として用いてきた黒鉛を、主に中国やメキシコから輸入している。さらに、黒鉛の生産では、バイオマスを2000℃以上に加熱して生成しており、バッテリー用グラファイト1tにつき5tから10トンの二酸化炭素を排出していた。一方、籾殻はこれまで米国では埋立処分されており、今回の研究により、国産の廃棄物から通常の燃焼でハードカーボンが生産できることがわかった。また燃焼で得られるエネルギーで、バイオ発電も可能となるため、バイオ発電の副生物が負極材になるという非常に持続可能な生産のスタイルがみえてきた。米国では年間約200億ポンド(約907万t)のコメが生産されている。

 今回の研究チームは、ミシガン大学イノベーション・パートナーシップの支援を受け、特許保護を申請中。またドイツのカールスルーエ工科大学のシルヴィオ・インドリス氏も共同執筆者として同研究に参加している。さらに、全米科学財団とメルセデス・ベンツ研究開発北米部門からも資金提供を受けている。

【参照ページ】Burned rice hulls could help batteries store more charge 【参照ページ】An Unexpected Source of Hard Carbon, Rice Hull Ash, Provides Unexpected Li+ Storage Capacities

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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