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【イギリス】政府、2030年までに電力需要100%をクリーン電源に転換。再エネ、原子力、CCUS

 英エネルギー安全保障・ネットゼロ省は12月13日、12月5日に英首相が発表した「変革のための計画(Plan for Change)」に盛り込まれた「2030年クリーンパワー目標」の達成に向け、エネルギーシステム改革政策「2030クリーンパワー行動計画」を発表した。

 英政府は現在、国家エネルギーシステム・オペレーター(NESO)からの独立した助言に基づき、2030年までに電力需要100%をクリーン電力(再生可能エネルギー発電及び原子力発電)で賄い、そのうち95%以上の発電量を低炭素電源とし、削減努力のない(Unabated)ガス火力発電を5%以下とする目標を掲げ、「2030年クリーンパワー目標」と呼んでいる。

 今回示した計画では、総合的な送電網計画がないことを大きく課題視している。同省によると、過去5年間で、送電網の系統連系待ちは10倍に増え、現在では739GWに相当する容量が待機状態にあるという。

 そこで、同計画では、送電網整備での「先着順」制度を廃止し、重要なエネルギーインフラに優先順位をつける権限を当局に付与。計画許可の決定を迅速化する。また、再生可能エネルギー・オークション・プロセスを拡大し、多くのプロジェクトが系統連系できるようにする。また同計画の達成に向け、官民で合計年400億ポンド(約7.8兆円)の資金を動員する目標も設定。製造現場や建設現場を中心に国内の新規雇用も創出するとした。

 英政府は今回、ウクライナ戦争により、化石燃料価格が高騰したことで、家計や企業財務を苦しめていると指摘。再生可能エネルギーや原子力を含む国産クリーン電源への転換を急ぐことが急務とした。

 英政府は、すでに、国内での陸上風力発電建設を解禁し、太陽光発電でも約2GWの建設を許可。9月には、差金決済(CfD)スキーム型の再生可能エネルギー・オークション第6ラウンド(AR6)の結果を発表し、太陽光発電と風力発電を合わせて9.6GWの新規設備容量で契約が成立している。

【参考】【イギリス】政府、再エネオークションで9.6GW成立。着床式洋上風力4.9GW、浮体式400MW(2024年9月5日)

 原子力発電では、環境庁、原子力規制庁(ONR)、天然資源ウェールズ州(NRW)が12月12日、GE日立ニュークリア・エナジー・インターナショナルの小型モジュール炉「BWRX-300」建設計画の汎用設計評価(GDA)プロセスで第1ステップを承認し、第2ステップに進めることを決定している。第2ステップでは、イングランド地方とウェールズ地方に的を絞り、一般的な安全、安全保障、保障措置、環境影響等に関する方法論、アプローチ、規範、基準、哲学の適合性等をチェックする。

 さらに同省と米エネルギー省は12月10日、英核融合スタートアップのトカマク・エナジーが建設を進めるオックスフォードシャー施設でのプロジェクト「LEAPS」に、総額4,050万ポンド(約80億円)を拠出することで合意している。プロジェクトは2025年に開始し、まずはリチウムの研究を進め、プラズマに面する部品の効率と耐久性を高めることに焦点を当てる。

 同プロジェクトには、英国の核融合未来プログラムから1,350万ポンド、米国政府から1,350万ポンド、トカマク・エナジー自身で1,350万ポンドを拠出する。

 12月12日には、英国原子力庁(UKAEA)と科学技術施設評議会(STFC)は、将来の核融合実験発電所の設計で米IBMとの提携も発表している。STFCのハートリー・センターとIBMが、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)、AI、量子コンピューター技術の知見を持ち寄り、UKAEAのデータとモデリング能力と融合。核融合実験データの基本的なダイナミクスを学習できる「フロンティア」や「基礎モデル」を作成することとなった。

 別途、同省は12月10日、炭素回収・利用・貯留(CCS)プロジェクト「イースト・コースト・クラスター」のティーサイド工業地帯側のプロジェクトへの最終投資決定も発表した。40億ポンド(約7,800億円)の予算が投下される。また、数千人の新規雇用創出も見込まれている。

 同プロジェクトは、「イースト・コースト・クラスター」は、工業地帯全体のカーボンニュートラル化を実現するため、ティーズサイド工業地帯とハンバー工業地帯の双方での一体開発が進められており、今回最終承認されたのは、ティーサイド工業地帯側。こちらでは、ネットゼロ・ディーズサイド・パワー(NZTパワー)、H2ティーズサイド、ティーズサイド水素CO2回収の3つのプログラムで構成されており、2027年頃の商業運転開始を目指している。

 ネットゼロ・ティーサイド・パワー(NZTパワー)は、英国初の炭素回収・貯留(CCS)付きCCGT(ガスタービン・コンバインド・サイクル発電)で、設備容量は742MW。年間で二酸化炭素200万tを回収する予定。同プロジェクトの出資構成は、bpが75%、エクイノールが25%。建設は、テクニップ・エナジーズとGEヴェルノバのコンソーシアムが受注している。NZTパワーは、NZTパワーで回収した二酸化炭素をパイプラインで145km先の海底に送り貯留する「Northern Endurance Partnership(NEP)」も付随しており、NEPには、bpが45%、エクイノールが45%、トタルエナジーズが10%を出資している。

【参考】【イギリス】BP、英国最大のブルー水素生産工場建設へ。ティーズサイド工業地域に水素供給(2021年3月27日)

 H2ティーズサイドは、2030年までに設備容量1.2GW規模のブルー水素生産工場を設立計画で、こちらもbpが手掛けている。こちらも年間で200万tの二酸化炭素を回収する計画。こちらの建設もテクニップ・エナジーズが受注している。

ティーズサイド水素CO2回収は、天然ガスからのブルー水素生産プロジェクトで、英ガス大手リンデ傘下のBOCが手掛けている。年間で20万tの二酸化炭素を回収する計画。

【参照ページ】Government sets out plan for new era of clean electricity 【参照ページ】Plan for Change 【参照ページ】GE-Hitachi’s Small Modular Reactor completes first step of design assessment 【参照ページ】UK and US announce first joint project in fusion energy innovation 【参照ページ】IBM, STFC and UKAEA collaborate on fusion powerplant design 【参照ページ】Contracts signed for UK’s first carbon capture projects in Teesside

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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