
米保健福祉省メディケア・アンド・メディケイド・サービスセンター(CMS)は4月4日、減量用医薬品インスリンに対する高齢者公的医療保険制度「メディケア」の適用を却下した。前バイデン政権がインフレ抑制法(IRA)に盛り込んでいた政策を白紙撤回した。
米国では、糖尿病や心臓病ではない人に対する減量用医薬品のメディケア適用を法律で禁止しており、単純に肥満な人には保険が適用されない。一方、糖尿病患者等は、インスリンの接種だけでも高額になる状況があり、資金的な理由でインスリンの接種を諦める人も出るという社会問題となっていた。
そこで前バイデン政権は、2023年からメディケアの加入者に対し、1ヶ月分のインスリンの負担上限を35米ドルに設定。具体的にはメディアケアの「パートD(処方薬)」では2023年1月から、「パートB(外来診療・検査)」では2023年7月1日から毎月のインスリン費用の患者負担上限額が35米ドルとなった。それ以上の差額は、メディケア予算でカバーすることとなった。
【参考】【アメリカ】政府、市民の処方薬コスト削減を1月から発動。インフレ抑制法の予算実行(2022年11月16日)
また、バイデン政権による医薬品メーカーとの交渉の結果、イーライリリーとノボノルディスクは、インスリン薬の薬価を70%以上引き下げると発表。加えて、バイデン政権は2024年8月、他社のインスリン薬4種についても、約70%の薬価引下げを2025年1月から実施すると伝えていた。一方、医薬品各社は、糖尿病治療ではなく、肥満治療のインスリン薬を市場に投入してきていた。
【参考】【アメリカ】イーライリリーとノボノルディスク、インスリン薬価を約70%引下げ。連邦政府政策(2023年3月16日)
そこでバイデン政権は2024年11月、糖尿病以外の肥満患者に対するインスリン処方に関しても、メディケアのパートDと、低所得者公的医療保険制度メディケイドの対象とし、保険適用とする案を発表。具体的には、2型糖尿病や心血管疾患等、米食品医薬品局(FDA)が承認した生活習慣病に関しても単純な肥満には当たらないとする解釈を示し、2026年から新ルールを適用するとしていた。実現すると約340万人が新たなインスリン処方での保険適用が受けられる予定となっていた。
しかし今回、CMSは、糖尿病以外の肥満患者に対するインスリン処方をメディケアとメディケイドの対象とする案を却下した。また、月額35米ドルの自己負担額上限の適用についても、全てのインスリン薬ではなく、メディケア医薬品価格交渉プログラム等に基づくインスリン薬のみを対象とする形に変更した。
今回の決定の背景には、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官の信念が関係しているとみられている。同長官は、肥満減量は、薬に依存するのではなく、健康的な食生活によって改善すべきとの考えを持っている。またCMSは、肥満治療略にまでメディケアとメディケイドを対象した場合、予算が約400億米ドル(約6兆円)増加するとの予測も発表していた。
【参照ページ】Contract Year 2026 Policy and Technical Changes to the Medicare Advantage Program, Medicare Prescription Drug Benefit Program, Medicare Cost Plan Program, and Programs of All-Inclusive Care for the Elderly (CMS-4208-F)
【参照ページ】FACT SHEET: Biden-Harris Administration Announces New, Lower Prices for First Ten Drugs Selected for Medicare Price Negotiation to Lower Costs for Millions of Americans
【参照ページ】Medicare Coverage of Anti-Obesity Medications
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