
環境に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「環境リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)」7月16日、「気候目標設定と移行計画に関するメモ」と「気候シナリオ分析と移行計画の相互作用に関するメモ」を公表した。また7月22日には、「適応・レジリエンスの移行計画への統合に関するメモ」を公表した。
今回公表されたメモは、いずれもNGFS加盟の金融監督当局に対し、金融機関が策定する移行計画についてNGFSとしての考え方を整理したもの。まず、「気候目標設定と移行計画に関するメモ」では、個別の金融機関の監視・監督を担当するミクロ・プルーデンス当局に対し、金融機関が移行計画を策定する上での潜在的なリスク要因として、効果的な目標設定が不十分であること、目標設定プロセスを支援する情報が不足していること、目標設定とモニタリングにおけるガバナンスやマネジメントの欠如等があることを説明。当該リスクに対応するための質問案も提示した。
特に、「効果的な目標設定が不十分であること」については、目標が過度に野心的であるとみなされる場合や、進捗が目標に届かない場合には、金融機関はグリーンウォッシングの指摘や信頼性に関する疑問を招き、訴訟リスクにつながる可能性があると指摘。また、目標が曖昧な場合には、誤解釈の余地が生じたり、目標が金融機関の目的を達成する方法を明確に示さない可能性があることもリスクとした。さらに、明確な時間軸を設定せずに目標を設定した場合、進捗の証明や信頼性の確立が困難になる可能性があることもリスクとして認識した。
目標の一貫性についても、市場環境や規制当局の期待の変化を反映しない目標を設定する場合と、頻繁に目標を変更する場合の双方に、リスクがあると指摘した。
「気候シナリオ分析と移行計画の相互作用に関するメモ」では、ミクロ・プルーデンス当局に対し、相互作用について初期段階での推奨事項を提示した。まず、気候シナリオ分析と移行計画の双方の策定プロセスにおいて、共通のデータ枠組みやメソドロジーを活用することを推奨。また、双方の策定部門が協調することも重視した。さらに、移行計画の策定時には、複数の異なるシナリオをテストすることも推奨した。
「適応・レジリエンスの移行計画への統合に関するメモ」では、既存の移行計画フレームワークの5つの構成要素「ガバナンス」「基盤」「実施戦略」「エンゲージメント戦略」「指標と目標」を踏襲し、適応とレジリエンスの考慮を組み込むための手法を提供した。
特に、気候変動緩和に関しては、ネットゼロがグローバル共通の目標となるのに対し、適応・レジリエンスでは、グローバル目標はなく、各金融機関の物理的リスクへのエクスポージャーと脆弱性の管理、また適応関連ビジネス機会の活用という2つの目標を中心に構造化されるという考え方を提示。実施戦略では、主にリスクについて、リスク回避、リスク受容、リスク軽減、リスクの移転/共有が含まれうるとした。
適応・レジリエンスでの指標と目標では、満期パスウェイを採用してデータ可用性と現在のカバー範囲を評価する作業から開始し、まず、適応プロジェクトへの資金動員額や、気候変動レジリエンス対策のトレーニングを受けた人数等、シンプルなインプット指標やプロセスレベル指標を用いて基準値を設定することも有効とした。その上で、徐々に適応活動のアウトカムを定量化するより高度なアプローチへと移行していくことを推奨した。
【参照ページ】NGFS Notes relating to transition plans on climate target setting and climate scenario analysis
【参照ページ】NGFS Input paper on Integrating Adaptation and Resilience into Transition plans
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