
環境に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「環境リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)」は11月5日、将来を見据えた気候リスク評価のための「長期気候マクロ金融シナリオ」第5版を発表した。2023年11月発表の第4版を改訂した。
第5版では、新たな経済及び気候データ、各国の政策公約、モデルを改訂。IPCCの共有社会経済経路(SSP)による最新のGDP予測及び人口予測データや、2024年3月時点における最新の各国レベルの気候コミットメントを反映した。
モデル改訂では、慢性物理的リスクのモデリングを高度化し、新たな損害関数が導入された。その中では、気候ショックの直後に経済生産が回復しないという最新のエビデンスも反映されている。その結果、慢性物理的リスクによる世界的な損失の推定値は、第4版と比較し、2050年までに世界全体で2倍から4倍に増加することとなった。反対に、迅速な協調的な移行は、気候変動によるGDPへの悪影響と比較すると、大幅にコストが抑えられることとなった。
NGFSは今回、新たに導入された損害関数に関し、慢性及び急性の物理的リスクによる経済的損失は重なって発生する可能性があると指摘。さらに、長期的な気候適応策、ティッピングポイントの発生、移住等の間接的な社会経済的影響、自然関連リスク等の他のリスク要因は考慮されていないため、気候変動による経済的影響は、第5版シナリオで予測されたよりもさらに深刻になる可能性もあると伝えた。
NGFSは、第5版の発行と同時に、3つの補足ガイダンス文書も公表した。内容は、第5版の改訂概要、新たな損害関数に関する詳細説明書、シナリオの背景にあるNGFSのモデリング枠組みと想定について論じたテクニカル文書の3つ。
【参照ページ】NGFS publishes latest long-term climate macro-financial scenarios for climate risks assessment
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