
国際エネルギー機関(IEA)は11月18日、重要鉱物のリサイクルに関して分析し、政策提言した報告書を発表した。
【参考】【国際】IEA、重要鉱物の見通し報告書2024年版。価格下落も寡占リスク懸念(2024年5月25日)
同報告書は、世界の重要鉱物のリサイクルの状況に関して分析し、リサイクルを拡大するための政策提言をしたもの。各国が掲げる公約を実現した場合、重要鉱物のリサイクルの拡大により、2050年までに新規採掘による供給量の増加を銅とコバルトでは40%、リチウムとニッケルでは25%削減できる可能性がある。
新規鉱山への投資は、クリーンエネルギー関連の需要の増加と既存鉱山による採掘量の減少等から必要不可欠。2040年までに約6,000億米ドル(約92兆円)の新規鉱山への投資が必要となるが、リサイクルの拡大が実施されない場合、このコストは30%増加する。
IEAの需要鉱物に関する政策トラッカーによれば、過去3年間でリサイクルに関する政策は30を超えて導入されており、2050年までに重要鉱物のリサイクル市場は2,000億米ドル(約31兆円)に拡大する見込み。
直近では需要に供給が追いついておらず、総需要に対するリサイクルされた銅の割合は2015年の37%から2022年には33%に減少し、ニッケルでは同期間内に35%から31%に減少した。アルミニウムは、廃棄物管理プログラムと規制の恩恵を受け、リサイクルの割合は同期間で24%から26%に増加した。
(出所)IEA
同報告書では、適切な政策インセンティブの整備により、EVが寿命を迎える2030年以降にリサイクルの原料の入手可能性が大幅に高まるため、世界的にリサイクルが拡大する可能性を示唆。特に、バッテリーリサイクル市場は、規模はまだ小さいが、2015年から2023年までの約10年間で11倍に成長している。
バッテリーリサイクル能力は、2023年には前年比50%増になると報告。世界を牽引しているのは中国。現在中国は、バッテリーリサイクルの材料回収と前処理工程のプロセスで80%のシェアを獲得しているが、2030年に世界シェアの70%以上を維持すると予測した。中国は2024年10月に使用済みバッテリーを含むリサイクルと再利用を専門とする新たな国営企業を設立している。
現状のバッテリーリサイクル能力は、利用可能な原料を上回っているが、2030年以降地域により不足する可能性についても言及。欧州と米国では2040年には利用可能な原料の30%しかカバーできず、インドではわずか10%にとどまる。
政府が重要鉱物のリサイクルを拡大するための提言として、投資家の確実性を高めるための詳細な長期政策ロードマップの策定、適切な廃棄物管理とリサイクル政策、経済的インセンティブによる国内インフラ強化、リサイクルを含めて包括的なアプローチと透明性の確保、イノベーションや研究開発、スキル向上への財政支援、新興国と発展途上国におけるリサイクル支援等を挙げた。
【参照ページ】Policy momentum behind critical minerals recycling gathering pace but greater uptake required
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