
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は5月21日、グローバル企業に設置交渉を義務づけている欧州労働者委員会(EWC)に関するEU指令の改正案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続きに入る。改正されると16年ぶりの改正となる。
EWCは、1994年に採択されたEU指令に基づき、EU域内での総従業員数が1,000人以上かつ2カ国以上で各々150人以上の企業に対し、労働者への情報提供と協議の権利を保証する機関。労働者側が「特別交渉団(SNB)」を結成し、EWC設置を要請した場合に、企業は交渉に応じることが義務化されている。交渉が妥結した場合には、EWC協定を締結し、EWCを正式に設置する。3年以内に合意できなかった場合にも、労働者側が希望すれば、法定モデルと呼ばれる形でEWCが自動的に設置されることになる。また労働者側が要請しなくても、企業側が任意に設置することも可能。
EWCの構成員は、各国の従業員数に比例して代表を選出。労働者代表の選出方法は各国の国内法や慣行に従うことになっている。また、経営陣との協議のための「全体会合」を年1回以上開催することも義務付けられている。経営陣との協議では、雇用数、採用・解雇方針、人員構成、教育訓練制度や、M&A、工場閉鎖、移転、大規模リストラ等の協議が義務付けられており、またEU加盟2カ国以上での就労時間、福利厚生、安全衛生、労働協約等の労働条件についても対象となる。但し、経営陣側はEWCからの要求に応じる義務はなく、あくまで諮問的機関という位置づけ。
今回の同EU指令改正では、まず、2009年の同EU指令改正前に締結された自主的な労使協定がある企業は、これまで同EU指令の適用が免除されてきたが、同免除ルールを廃止。これにより、新たに約320社、約540万人の労働者が新たに同EU指令が適用されることになる。
また、協議対象事案については、EU加盟2カ国以上にまたがる事案のみが対象となることを明確化。さらに、日常的な決定や従業員に軽微な影響しか与えない問題には適用されないことが明確となった。
EWCの構成員となる労働者代表についても、ジェンダーバランスを考慮する努力義務が課される。経営陣が要求する機密保持については、客観的な基準を満たす場合にのみ認められ、当該理由が存続する期間が終了すると、機密扱いが解除されることも規定される。
司法アクセスについても、司法手続(及び関連する場合には行政手続も)へのアクセスに関する規定を強化し、法的代理人等に関する費用を会社側負担とする。同EU指令に企業が違反した場合の罰則についても、抑止力を十分発揮できる水準にまで引き上げることが確認された。
同EU指令は、EU域外にグループ本社を置く企業には適用されないが、EU域内に地域中核拠点を有している場合には適用される。実際に、トヨタ自動車、本田技研工業、日立製作所、ソニーグループ、パナソニックホールディングス、武田薬品工業、アステラス製薬、花王、ヤンマー等が、EWCを設置している。
【参照ページ】Strengthening representation of EU workers in multinational companies: Council and Parliament reach agreement on the revision of the European works council directive
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