地域コミュニティの森林に対する権利を強化することが、大量のCO2排出量削減、気候変動目標の達成、森林保護、そして住民の生活を守る上で最も重要な戦略となる。
これは、World Resources Institute(以下、WRI)とRights and Resources Initiative(以下、RRI)が共同で発表した新レポート”Securing Rights, Combating Climate Change: How Strengthening Community Forest Rights Mitigates Climate Change(権利の保護、気候変動との戦い:地域コミュニティの森林に対する権利の強化がいかに気候変動を軽減するか)”の中で提言されたもの。
WRIでCEOを務めるAndrew Steer博士は「世界全体の森林で少なくとも370億トン相当のCO2を貯蔵することができ、地域コミュニティの森林に対する権利を強化することは、気候にとっても地域住民にとっても良いことだ。全ての政府高官や首相は、気候変動担当者もこの重要な戦略に注目すべきであり、この方法はREDD+やエネルギー効率化と全く引けをとらない気候変動対策となる」と語った。
同レポートによれば、世界全体で地域コミュニティや先住民は377億トンのCO2が貯蓄できる政府公認の森林に対する権利を持っており、これは世界全体の乗用車が1年間で排出する量の29倍に匹敵するという。
また、同レポートでは、広大な森林地帯を有するブラジル、インドネシア、コロンビアなどを含む14カ国において政府が地域コミュニティに対して森林の権利を強化したことで、より効果的に不法な森林破壊を食い止め、CO2排出を防ぐことが可能となったと分析しており、ブラジルだけでも、2050年までに2,720万ヘクタール分の森林劣化を食い止めることにつながっているとしている。これは120億トン分のCO2排出量削減に値する量で、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国全体で排出されるCO2の約3年分に相当するという。
RRIでコーディネーターを務めるAndy White氏は「先住民や地域コミュニティの森林に対する権利を保証することはその国の森林保護および回復に大きく貢献する。気候変動対策に本気で取り組むためには、森林に生活を依存しており、誰よりも森林の健康状態に強い関心を持っている地域コミュニティの権利を本気で尊重していかなければならない」と語る。
同レポートは、コミュニティの森林保全による気候変動抑制を最大化する方法として下記5項目の実行を政府に提案している。
- 地域コミュニティの森林に対する権利を法的に認める。
- 境界線の設定や、侵入者の排除などの森林に対する権利を強化する。
- 持続可能な森林の利用や市場へのアクセスを改善する技術支援やトレーニングを提供する。
- 森林に影響を及ぼす投資に関する政策決定に地域コミュニティの参加を認める。
- 森林がもたらす気候へのプラス影響やその他の利益に関し、地域コミュニティに報奨金を与える。
同レポートでは地域コミュニティの森林に対する権利を認めたことで気候変動に対して大きな成果を出している国の事例も紹介されている一方で、未だに状況が芳しくない国の政府に対する注意も喚起している。例えば、森林伐採や土地利用によるCO2排出量が世界第2位のインドネシアでは、地域コミュニティが所有する約420万ヘクタールの森林のうち、法的権利が認められているのは1ヘクタール分にとどまっているとのことだ。
気候変動対策というとエネルギー効率化や再生可能エネルギー、クリーンテックなどが真っ先に思い浮かぶが、地域コミュニティ・先住民の権利保護により森林破壊を食い止めるという方法も実は非常にインパクトがあることがよく分かる。同レポートは下記からダウンロード可能。
【レポートダウンロード】Securing Rights, Combating Climate Change: How Strengthening Community Forest Rights Mitigates Climate Change
【団体サイト】World Resources Institute/ Rights and Resources Initiative
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