最近はコーポレートブランディングの一環として自社のサステナビリティ活動を映像作品として発信する企業が増えてきている。そうした企業らの映像作品を表彰するイベントがロンドンで開催された。
環境・社会問題に関する映像制作を手がける英国のチャリティ団体tveは12月9日、ロンドンのBAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)でGlobal Sustainability Film Awards 2014を開催した。同イベントは、サステナビリティ活動に積極的に取り組んでいる企業や団体が制作した映像作品の中でも特に優れた作品を表彰するもので、言わばサステナビリティ業界のアカデミー賞だ。今年で3度目の開催となる。
革新的な方法でサステナビリティ戦略を実践している企業らのグッドプラクティスを世界に広め、環境・社会問題の解決に向けた変革を促すのが狙いだ。
イベントを主催するtveは、Central TV、国連環境プログラム、WWFらによって1984年に設立された英国のチャリティ団体で、過去30年間以上に渡り映像を通じて社会変革に取り組んできた。
Global Sustainability Film Awards 2014では、Environment(環境)、Community Investment(コミュニティ投資)、Inspiring Good Governance(優れたガバナンスの啓発)の3部門があり、合計33の作品がエントリーした。各部門のエントリー作品および最優秀作品、そして総合最優秀作品は下記の通りだ。
Environment(環境)
Environment(環境)部門は、エネルギー効率化や再生可能エネルギー、水資源の取り組み、交通、農業などの分野で環境への負荷を削減する取り組みに焦点をあてた作品を対象としている。今年は化学大手のBASF、航空のCathay Pacific Airways Limited、銀行大手のHSBCなどをはじめあらゆる業界から様々な映像作品がノミネートされ、とても競争の激しいカテゴリとなった。
最優秀作品
Thames Tideway Tunnel Limited(英国):"You Poo Too"
同部門の最優秀作品に選ばれたのは、英国テムズ川の下水トンネル工事を手がけるThames Tideway Tunnel Limitedの作品だ。ロンドンを代表するテムズ川に昨年だけで5,500トンもの汚水が直接流されたという衝撃の事実とともに、ロンドン市民に対してテムズ川をトイレのように扱うのをやめ、綺麗にしていこうと訴えかける。
ノミネート作品一覧:
- Bam Nuttall(英国):"Bringing engineering to life"
- BASF(ドイツ):"Sustainability at Crop Protection Europe"
- BASF(ドイツ):"The new source -desalination in Cyprus"
- Cathay Pacific Airways Limited(香港):"Working towards a sustainable future"
- Chepu Adventure(チリ):"Where nature is our main supplier"
- Global Generation(英国):"Constructing Environmental Sustainability"
- HSBC NOW(LAM)(英国):"Cutting the commute -Bus Rapid Transport(BRT) Mexico City"
- HSBC GLOBAL(英国):"Investing in lives and livelihoods"
- Snowcarbon Ltd(英国):"How children make the journey part of the holiday"
- Sontay Limited(英国):"Taking control of sustainability"
- Thames Tideway Tunnel Limited(英国):"You Poo Too"
Community Investment(コミュニティ投資)
Community Investment(コミュニティ投資)部門は、従業員ボランティアプログラムなどを通じてコミュニティの発展に貢献する取り組みを実施した企業らの作品を対象としている。なぜその地域でそのプログラムに取り組むのか、その結果としてコミュニティにどのような利益をもたらしたのか、などがポイントとなる。製薬のAstraZeneca 、宝飾のCred Jewellery、アカウンティングファームのErnst & Young LLPなどあらゆる業種の企業、団体からノミネートがあり、3部門の中でもっとも多くの作品が集まる人気のカテゴリとなった。
最優秀作品
Global Generation(英国):"Big Bang Project"
同部門の最優秀作品に選ばれたのは、次世代の若者に対するサステナビリティ教育プログラムを展開している英国のNGO、Global Generationの作品。建設会社のKierやCarillion、BAM、鉄道のEurostar、新聞社のThe Guardianなど企業と共に実施している、子供向けプロジェクトBig Bang summer schoolの様子を紹介している。このプロジェクトを通じ、子供たちは最先端の宇宙科学の知見を学びながら、あらゆる人々、万物は全てつながっていることを理解していく。
ノミネート作品一覧:
- AstraZeneca(英国):"Young Health Programme three years on"
- AstarZeneca(英国):"Young Health Programme Portugal youth consultation"
- BASF SE(ドイツ):"Water education project, Mangalore, India"
- Cred Jewellery(英国):"The story of a wedding ring"
- DLA Piper UL LLP(英国):"Child justice in Bangladesh"
- Energy Futures Laboratory, Imperial College London(英国):"Powering the top of the world -empowering communities"
- Ernst & Young LLP(英国):"The EY Vantage Program"
- Global Generation(英国):"Big Bang Project"
- Golder Associates(インド):"Golder Trust for Orphans"
- HSBC NOW(米国):"Backpack, best start to the year"
- HSBC NOW(英国):"Volunteering for the HSBC Water Programme"
- M&C Saatchi London(英国):"Share the road"
- Rainforest Expeditions(ペルー):"About us"
- So You Wanna Be in TV?(英国):"Changing lives, Changing TV"
- The Robes Project(英国):"No place to live"
- Tusoco Viajes(ボリビア):"Beyond the landscape, the people"
- WWF(スイス):"WWF and M&S thank consumers for their support for marine conservation"
Inspiring Good Governance(優れたガバナンスの啓発)
Inspiring Good Governance(優れたガバナンスの啓発)部門では、透明性、インテグリティ、アカウンタビリティといったサステナビリティを高める上で重要となるガバナンス原則を体現、促進している企業や組織の優れた取り組みを対象としている。同部門にも、英国の建築エンジニアリングBam Nuttall、オーストラリアの銀行Westpac Groupなど様々な業種から作品がノミネートされた。
最優秀作品
Chepu Adventures(チリ):"Where sustainability more than a way of living is a passion"
同部門の最優秀作品に選ばれたのは、チリでサステナブル・ツーリズムを推進しているChepu Adventuresの作品。チリの壮大で美しい大自然の映像とともに、”When you love nature, you need to protect it”と環境保護の重要性を訴えかける作品だ。
ノミネート作品一覧
- Bam Nuttall(英国):"What is Sustainability"
- Chepu Adventures(チリ):"Where sustainability more than a way of living is a passion"
- Psaros(オーストラリア):"Leading by doing"
- Seeding Time Pictures(オーストラリア):"Atlas Pearls and Perfume"
- Westpac Group(オーストラリア):"100 reasons"
なお、全作品の総合最優秀作品には、Thames Tideway Tunnel Limited "You Poo Too"が選出された。今回ノミネートされた全作品の一覧はtveのウェブサイトから閲覧可能だ。
受賞式を終えて、アワードの会長を務めるOliver Rothschild氏は「Global Sustainability Film Awards 2014には世界中から人々が集まり、大小を問わず多くの企業や組織が強く視覚に訴える形で地球が直面しているとても大きな課題に我々が立ち向かう方法を教えてくれた。世界中のあらゆる業種の企業や組織がこれらの映像をオンラインやテレビで目にし、持続可能な事業を行うことを熱望し、高い倫理基準の確立に向けて貢献をしてくれることを願っている」と語った。
映像には人の心を動かす力がある。映像という形で情報を発信し、コミュニケーションをとることはとても有効だ。映像を通じて自社の展開する活動の価値を分かりやすく伝えることで、より多くの人に関心を持ってもらうきっかけを作り出すことができる。特にソーシャルメディアが広く普及している現代では人々の共感がかつて以上に伝搬しやすくなっており、一つの映像が大きな動きを作り出すこともある。いわゆるCSR・サステナビリティ報告書だけではなく、映像を通じたエンゲージメントも今後ますます重要性を増していきそうだ。
【団体サイト】tve
【参考サイト】Global Sustainability Film Awards 2014
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