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【国際】国連気候変動特使、英独の化石燃料推進政策を「パリ協定に反する」と非難

UN

 国連気候変動・エルニーニョ特使を務める元アイルランド大統領、メアリー・ロビンソン氏は7月18日、英国政府が昨年導入した石油・ガス業界への減税措置と、ドイツ政府が石炭火力発電業界に対して補助金を支払う約束をしたことに対し、昨年12月に合意されたパリ協定の精神に対する違反だとして、名指しで非難する会見を行った。英紙ガーディアンが報じた。

 この会見の中で同氏は、「英国の納税者は2015年から2020年まで、数十億ポンドの負担を強いられ、同時に再生可能エネルギーやエネルギー効率化(省エネルギー)に対する補助金も打ち切られている」と指摘。また「ドイツは2018年までに石炭に対する補助金を停止するとしてきたが、電力の安定的な供給能力に応じて電力会社に料金を支払うという新たな仕組みを導入している。ディーゼルや石炭により発電している企業に対しても補助金を支給している」と、同国に対して断固とした石炭の使用停止を呼びかけている。

 パリ協定では、長期的に化石燃料の使用を停止するという目標に向けて、化石燃料関連業界に対する財政支援を行わないことになっており、両国の政策がこれに反していることが非難の対象となっている。特に英国は、これまで気候変動対策のリーダーとして強い影響力を行使してきただけに、EUからの離脱、新政権の発足と共に環境政策の方向性やコミットメントを危惧する声が高まっている。

 7月13日に首相に就任したテリーザ・メイ氏は、これまで気候変動対策の中核的機関としての役割を担っていた「エネルギー・気候変動省」を廃止し、経済官庁と統合させた「ビジネス・エネルギー・産業戦略省」を新設した。省名から「気候変動」が消えたことで、この新たな機関が担う役割も大きく変わる可能性がある。

 今回ロビンソン氏は、英独両国を強く非難したが、同時に、このようなパリ協定に合致しない方向性を示す政策はこの2カ国だけに限らないとし、全ての国が化石燃料への補助金を停止すべきだとも訴えた。さらに、前国連事務総長のコフィー・アナン氏やノーベル平和賞受賞者のデズモンド・ツツ氏などロビンソン氏と共通の懸念や主張をもつ「長老グループ」も、先進国が率先してパリ協定での合意目標を達成するモデルとなるよう呼びかける声明を発表している。このグループは、カーボンプライシングの活用、今年の伊勢志摩サミットで宣言された「2025年までに『非効率』な化石燃料への補助金を廃止すべき」における「非効率」の意味の明確化を提唱するとともに、世界最大の温室効果ガス(GHG)排出国である10カ国がパリ協定を批准していないこと等も指摘し、気候変動問題の進展に積極的に関与し促して行く姿勢を示している。

 パリ協定の批准に関しては、最大の排出国である中国と米国が今年中に批准するとしているが、その実現は少なくとも全世界の55%の温室効果ガスを排出する、少なくとも55カ国が批准した後に、両国に対する批准の強制力が発生する。国連気候変動枠組み条約(UNFCC)のホームページによると、2016年7月24日現在でパリ協定を批准した国は19カ国、GHG排出量は0.18%となっている。このような状況を背景にしてロビンソン氏は、「英国はこれまで、様々な側面で気候変動対策における正真正銘のリーダーだった。もう一度、その立場に戻ってもらいたい。しかし、残念なことに、現在はその役割を果たしていない」と、英国のリーダーシップ復活を要請している。

【参照ページ】UN criticises UK and Germany for betraying Paris climate deal
【参照ページ】Abolition of Decc 'major setback for UK's climate change efforts'
【参照ページ】UK becomes only G7 country to increase fossil fuel subsidies

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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