英運輸省、ビジネス・エネルギー・産業戦略省、国防省は7月19日、英政府の航空業界での2050年カーボンニュートラル化政策「ジェット・ゼロ政策」に合わせ、各省の戦略を発表した。
運輸省は今回、達成戦略として「ジェット・ゼロ戦略」を発表。航空システム全体のカーボンニュートラル化ロードマップを掲げた。政府の諮問機関が求める水準以上の削減を掲げ、新型コロナウイルス・パンデミック前の2019年水準に戻さない方針を示した。
同省は今回、長期的なカーボンニュートラル化では、3つの重要原則を掲げた。具体的には、
- 国際的なリーダーシップ:国際民間航空機関(ICAO)を通じ、国際的な航空排出量(CORSIA)で主導的な役割を果たす
- パートナーシップの実現:ジェットゼロ協議会等を通じ企業な市民と積極的に連携する
- 機会の最大化:英国の全セクターに波及する雇用、産業、技術を創出し、経済をレベルアップさせる
そして3つの重要原則に基づく、6つの政府方針も表明した。まず、機体から航空、空域までの航空システム全体で燃費を毎年2%向上させることを目標に、空域の近代化を支援するため370万ポンドの予算を用意。
次に、2030年までに従来の航空燃料に10%以上のSAFを混合することを義務付ける方針も示し、新たに1億6,500万ポンドを用意。そのため、2025年までに商業用SAFプラントを5ヶ所以上に建設することを新たにコミット。政府はこれにより2035年までに、最大5,200人の雇用を創出し、地方創生につなげる。実現に向けては、政府は、商業規模生産工場の建設に対し、公募型の補助金制度「Green Fuels, Green Skies」を創設し、1,500万ポンドの予算を用意。さらに、100%SAFでのフライト実現の報酬金制度の第2フェーズとして、大西洋横断フライトの達成企業に100万ポンドを支給する。
3つ目は、2030年までに英全土を結ぶゼロエミッション路線を誕生させる。ゼロエミッション航空機の開発を支援する。
4つ目は、英国排出量取引制度(UK ETS)を強化することによる航空業界での自発的なカーボンニュートラル化の気運醸成。
5つ目は、搭乗顧客がSAFフライトを選択できるよう、2022年秋に、航空券の予約時に二酸化炭素排出量情報を提供する政策に関するエビデンス募集を発表する予定。
6つ目は、飛行機雲や窒素化合物(NO2)等の二酸化炭素以外の物質に関する分析を深め、緩和策を追求。科学的に不明確な分野の関係性の理解を深め、議論そのものをリードする。
運用省は今回、航空業界はパンデミック以前は、毎年220億ポンド以上の経済効果と直接雇用23万人を抱える重要セクターと指摘。カーボンニュートラル化を率先することで、経済全体の活性化につなげるとした。今回掲げた施策も5年毎に見直す方針も示した。
ビジネス・エネルギー・産業戦略省からは、低炭素航空宇宙イノベーションの分野に2億7,300万ポンドの予算が発表された。
具体的には、水素やバッテリー技術等の最新のグリーン航空宇宙イノベーション、デジタル製造や3Dプリンティング等の超効率的な製造プロセスや技術を実現する新規プロジェクトを支援するプログラムを、航空宇宙技術研究所(ATI)が主導。この分野に1億5,500万ポンドを投ずる。雇用創出効果は81,000人と見込む。
さらに機体の電動化、水素燃料化、自動運転技術開発や、電動ドローン市場の拡大で、「Future Flight Challenge」プログラムの一環で、1億550万ポンドを投ずる。雇用創出効果は8,800人以上と見込む。ドローンでは、危険箇所調査による高速道路の安全性と所要時間の向上、スコットランド全域への医療関連輸送等でも活用。「ドローン野心声明」も発表し、ドローン市場で2030年までに450億ポンドの経済効果を創出すると表明し、65万人の雇用創出へとつなげる考えも披露した。Future Flight Challengeは、政府から最大1.25億ポンド、企業から1.75億ポンドを拠出し、最大3億ポンドの資金動員ができる官民協力制度。
英国防省からは、英空軍燃料のカーボンニュートラル化向けた新たな施策の発表がった。英ゼロ・ペトロリアムと協働で、合成燃料の量産に向けた研究を開始することを表明した。英空軍は、2040年カーボンニュートラルを宣言しており、2025年までにカーボンニュートラル型の空軍基地の第1号を誕生させる計画している。
【参照ページ】Sky’s the limit as UK sets out strategy to reach net zero aviation and deliver guilt-free flying
【参照ページ】Jet Zero strategy: our approach for achieving net zero aviation by 2050
【参照ページ】Sustainable fuel set to power the Royal Air Force reaches landmark new stage
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