イギリスの空港業界を代表するAirport Operators Association(空港運営協会、以下NZAOA)は、9月10日に議会で公表したレポート「Sustainable Airports: Improving the environmental impact of the UK’s global gateways」の中で、イギリスの空港は2010年からの2年間で10万人以上も利用客数が増加しているにも関わらず、CO2排出量および騒音は減少していると公表した。
同レポートによれば、イギリスの上位18空港(全乗客数の95%を占める)のCO2排出量は、2010年から2012年の2年間で約3%削減したという。同期間で乗客数は5%以上、交通量は約2%増加しているため、空港としての成長とCO2排出量削減の双方を同時に達成していることになる。
また、空港周辺の騒音については、空港としては以前より空港周辺の騒音軽減や地域コミュニティのエンゲージメントに対する多大な投資により騒音への理解向上に取り組んできたものの、現状では政府の航空政策と都市計画政策の一貫性の欠如により騒音エリア内における住宅開発が進んでしまい、空港周辺地域の人口増加が制御できない状態となっているという。
報告書によれば、過去3年の間で騒音エリア内において建設予定、もしくは既に建設済みの物件数は5,700世帯にも達しており、一部の人々は騒音に悩まされるだろうとのことだ。
これらの状況を踏まえ、NZAOAの報告書では、イギリス政府に対して下記2つの支援を要請している。
- CO2削減について:持続可能な航空燃料の利用促進に向けて航空業界と協働する。その中には新たな技術開発への投資や製造を促すための明確な政策の枠組みの立案も含まれる。
- 騒音について:地方自治体に対して国としての政策指導を行い、空港とその他のインフラが共存できる住宅政策を支援する。政府は空港に対して騒音エリア内の住民の数を制限・減少するように求め、デベロッパーが同エリア内に新たな住宅を建設するのを避ける。
NZAOAの代表を務めるDarren Caplan氏は「この報告書は、イギリス経済にとって重要な役割を果たしている空港が持続可能な形で成長できるということ、そしてそれは政府の政策支援があればさらに実現できることを示している」と語った。
また、同氏は「我々は政府と協力体制を築き、持続可能な空港の発展を次のレベルに押し上げる必要がある。持続可能な燃料利用の推進、グローバルのCO2排出量取引制度の推進、騒音エリアに住む世帯数を減らすための国と地方自治体の一貫した政策など、我々はこれらの課題を前に進めるために首相らと議論する」と語り、今後も政府と共に空港のサステナビリティ向上に取り組んでいく意欲を見せた。
利用者数の増加とCO2排出量削減を同時に達成したというイギリスの空港の取り組みや、更なるCO2削減や騒音軽減には政府の政策面からの支援が不可欠として業界団体として政府に積極的に働きかける動きなどは他国の空港業界にとっても参考になる。
NZAOAのレポートは下記からダウンロード可能。
【レポートダウンロード】Sustainable Airports: Improving the environmental impact of the UK’s global gateways
【リリース原文】Airports are reducing their carbon footprint and managing noise, despite 10m increase in passenger numbers. Government now urged to deliver policy support
【参考サイト】Airport Operators Association
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