英サーキュラーエコノミー推進NGOのWRAP(Waste & Resources Action Programme)は10月27日、プラスチック包装・容器素材として普及しているポリオレフィンの生分解性に関する規格「PAS9017 プラスチック」について、評価するとともに、今後予測し得る課題に関する意見表明を行った。
PAS9017 プラスチックは、英規格策定機関BSIが10月1日に策定した規格。WRAPは、同規格の運営委員にも参画している。
【参考】【イギリス】BSI、ポリオレフィンの生分解性に関する規格をリリース。プラスチックで初(2020年10月26日)
WRAPは今回、同規格が、プラスチック製品カテゴリの定義明確化や品質向上、イノベーションに寄与すると評価。生分解性プラスチックと酸化型生分解性プラスチックを区分できる点においても重要とした。
酸化型生分解性プラスチックは、太陽の光や熱による酸化分解促進反応を利用し、自然環境で酸化崩壊、低分子化し、さらに微生物分解を用いることで分解できるプラスチックの総称。従来型のプラスチック素材である低密度ポリエチレン(LDPE)に化学物質を追加して生産される。廃棄プラスチックが自然環境で分解できるため、複数の国で利用促進が進んでいるが、最近の研究によると、現在技術では分解が十分にできていないことが判明している。分解途上で終わり、バラバラになった素材がマイクロプラスチックとなり環境により悪影響を与えてしまうという。
WRAPは酸化型生分解性プラスチックを世界的に禁止するべきだとし、サーキュラーエコノミー推進の英エレン・マッカーサー財団が主導する酸化型生分解性プラスチックの廃止を求める共同宣言「Oxo statement」にも署名。海洋プラスチック問題の原因となっている10大・使い捨てプラスチックの使用を禁止するEUの使い捨てプラスチックに関する指令案でも酸化型生分解性プラスチックは排除対象と指摘した。
【参考】【国際】150以上の企業・NGO、酸化型生分解性プラスチックの廃止を求める共同宣言発表(2017年11月28日)
【参考】【EU】EU理事会、2021年から使い捨てプラ使用禁止のEU法案可決。同EU指令が成立(2019年5月23日)
一方、同規格を適用する上で注意すべき点にも言及。土壌や淡水、海洋の環境について考慮されていない点や、同規格準拠で「グリーン」を謳うことできず、ISO14021に準拠する必要があるとした。また、生分解性については、2年以内に生分解が完了する必要があり、生分解可能な条件やタイムスパンについて明確すべきだとした。
生分解については、同規格ですべての分解プロセス上でマイクロプラスチックが排出されないことを保証するわけではない点も指摘。リサイクル性についても規定していないため、リサイクル性を謳うためにも、別途証明する必要があるとした。また、生分解性とすることで消費者のポイ捨てを助長することも懸念。生分解性について消費者へのメッセージも慎重に検討する必要があるとした。
【参照ページ】WRAP statement on PAS 9017 Plastics. Biodegradation of polyolefins in an open-air terrestrial environment
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら