最保険世界大手スイス最保険は8月25日、二酸化炭素の大気直接回収(DAC)技術を開発しているアイルランドClimeworksとの間で、10年間で1,000万米ドル(約11億円)のボランタリー・カーボンクレジットの購入契約を締結したと発表した。さらに、リスクマネジメントの知見やリスク移転のソリューションも共同開発していく。
【参考】【アイスランド】二酸化炭素排出量がマイナスの地熱発電所、実験稼働開始。世界初(2017年11月3日)
Climeworksは、大気直接回収(DAC)型のCCS(炭素回収・貯留)サービスを展開している。大気から二酸化炭素を濾過し、近くの岩層に永久貯留する。水に溶かして地下深くに圧入すると、周囲の玄武岩と自然に反応して安定した炭酸塩鉱物となり「岩」となる。スイス再保険によると、この手法は「現在市販されているすべての炭素除去ソリューションの中で、最も安全で耐久性のある方法」と考えられているという。
スイス再保険は、2030年までにスコープ1とスコープ2で、2050年までにスコープ3も含めてカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)を標榜しており、今回のアクションは、カーボンオフセットとなる。11億円の投資は世界的にも異例。資金シグナルを出すことで、DACの技術開発やコスト削減、市場の活性化につなげる考え。今回の11億円も、短期的なオフセットよりも、長期的な技術開発促進による将来のオフセット価格低減の意味合いが強い。
スイス再保険は今回、植林等の自然を軸としたソリューション(NbS)も重要だが、土地利用の制限や山火事等があるため、DACも重要と表明した。スイス再保険は、投資や保険引受でのカーボンフットプリントを極限まで削減しつつ、それでもゼロにできない部分も、オフセットするアプリーチも打ち出している。保険会社が発信する市場へのシグナルとしては、保険と投資での貢献だけでなく、長期購入契約という3つ目のオプションがあることも強調した。
両社は、将来の投資やプロジェクトファイナンスの機会も今後検討していく。
【参照ページ】Swiss Re and Climeworks launch partnership by signing world’s first ten-year carbon removal purchase agreement
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