
IT世界大手米アルファベット傘下のAI開発子会社DeepMindとスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のスイスプラズマセンター(SPC)は2月16日、深層強化学習によりトカマク内の核融合プラズマを制御することに成功したと発表した。成果は、英科学誌ネイチャーで論文発表された。
今回の発表は、トカマク内にプラズマを閉じ込めておくための制御システムを、人工知能(AI)が自律的に構築するというもの。これまでは、複数の制御システムと制御システムごとに長時間の演算による変数設定が必要だったが、AIが条件ごとに適切な変数を見つけ出し、最適な制御を行う。
トカマク型は、プラズマ閉じ込め方式の核融合技術で、将来の核融合技術の最有力候補と注目されている。国際熱核融合実験炉ITERも、トカマク型を採用。
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トカマクとは、核融合の研究を行うため、磁気コイルで囲まれたドーナツ型の真空容器のこと。トカマクに電圧をかけ磁場を発生させ、太陽の核よりも高温の水素プラズマを閉じ込め、水素原子を核融合させる。SPCのトカマクは、可変形トカマク(TCV)と呼ばれ、プラズマの形状を自由に変えることができる。
TCVにおける既存の制御システムは複雑で、19個の磁気コイルごとに制御システムが必要だった。それぞれの制御システムは、アルゴリズムを使ってプラズマの特性を推定し、それに応じて磁石の電圧を調整する。実時間1秒間をシミュレートするのに何時間も待つ必要があった。
今回発表されたアーキテクチャでは、1つのニューラルネットワークを使ってすべてのコイルを一度に制御し、最適な電圧設定をセンサーから直接学習し、プラズマの制御を実現することができる。実現したいプラズマの形状を目標として設定するだけで、AIが自律的に適切な制御方法を見つけることが可能。
今回の発表では、雪の結晶を含む複数の形状、ドロップレット(容器内で2つの異なるプラズマが同時に存在する)の安定化の実現が報告された。また、現在建設中のITERの施設で利用が検討されているプラズマ形状に近い状態も実現できたという。
【参照ページ】Accelerating fusion science through learned plasma control
【参照ページ】EPFL and DeepMind use AI to control plasmas for nuclear fusion
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