【EU】欧州委、化石燃料企業や低コスト発電企業への超過利益税提案。定量的な省エネ義務化も

　欧州委員会は9月14日、エネルギー価格の高騰への対策として、予想価格が高い上位10%の時間帯に電力消費を5%以上削減することを加盟国に課す制度を提案した。また、2023年3月31日まで電力需要全体の10%以上を削減する努力義務も課す方針。立法化に向けてはEU理事会と欧州議会の賛同が必要となる。

　欧州委員会は、今回の施策を実施すると、冬季のガス需要を12億m³削減できると見立てている。さらに省エネを進めることで、二酸化炭素排出量の削減も図る。欧州委員会はすでに、冬季に向けたガス貯蔵の強化や、長期的な電力市場改革も進めているが、短期的な措置として省エネを断行したい考え。

　加えて今回、燃料価格の高騰の中でも、比較的発電コストが低く安定している再生可能エネルギー、原子力発電、褐炭での石炭火力発電の事業者に対し、超過利益税を課す制度も提案した。発電コストと売電収入の差の上限を1MWh当たり180ユーロに設定し、超過分は加盟国政府が徴収し、エネルギー需要家への補助金に回させる考え。EU域内で電力輸出をしている企業は、二国間協定を締結し、電力の純輸入量の多い国に積極的に補助金原資を融通することも奨励した。特に、電力の純輸入量が100%以上の国は、2022年12月1日まで二国間契約を締結することも義務化する意向。

　さらに、石油、ガス、石炭の生産・精製企業に対しても、過去3年間の平均理系の20%を超える2022年の利益に対し加盟国政府が課税するウィンドフォール税も提案した。徴収した資金は同様に需要家への補助金に回す。補助金には、REPowerEU政策の目的に沿って国際プロジェクトに資金を提供したり、雇用保護や再生可能エネルギー及び省エネへの投資促進のために活用することも認められる。

　超過利益税に関しては、イギリスやスペインでは、化石燃料事業者のみをターゲットとした制度を発表。この方式をドイツのシュルツ首相やフランスのマクロン大統領も支持していた。しかし、9月9日に開催されたエネルギー相級のEU理事会では、対策の方向性で一致できず、欧州委員会に対し、比較的発電コストが低く安定している「インフラマージナル」事業者に対する収益の上限設定と化石燃料企業からの資金動員措置の双方を検討するよう指示していた。これに基づき、欧州委員会は今回政策を提示した形。背景には、化石燃料企業へのウィンドフォール税課税のみでは、発電価格がさらに高騰すると考えるEU加盟国がいる様子が伺える。

　同時に、9月9日のEU理事会は、ガス価格の上限設定の検討と、EU全域で協調した電力需要削減インセンティブ設計も欧州委員会に指示している。電力需要削減に関しては、欧州委員会は、5%以上の削減義務に応じた加盟国内での省エネ補助金支給の容認を今回提示し、EU理事会からの指示に応えた形。一方、ガス価格の上限設定に関しては、今回の政策には含まれておらず、こちらも加盟国間での調整が難航していることが伺える。

【参考】【ヨーロッパ】EU、ロシア産天然ガスでも上限価格設定へ。ロシアはガス供給停止で対抗（2022年9月7日）

　その他、欧州委員会は、消費者や中小企業に対し、原価割れでの電力小売や、中小企業に対しても一時的に容認する制度も提案した。欧州委員会は今月中に、再度、エネルギー相級のEU理事会を招集したい考え。

【参照ページ】Energy prices: Commission proposes emergency market intervention to reduce bills for Europeans
【参照ページ】Extraordinary TTE (Energy) Council Meeting of 9 September 2022

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