国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は11月29日、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)に先駆け、1.5℃シナリオ達成による社会・経済的な影響を概説した報告書「世界エネルギー転換見通し」の第2部を発表した。IRENAは2023年3月、札幌市で開かれたG7気候・エネルギー・環境相の会合の場でも発表された、1.5℃シナリオ達成に向けた世界のエネルギー転換の現状を概説した報告書を発表していた。
【参考】【国際】IRENA、2030年までに累計2000兆円の追加投資必要。2050年に再エネ発電91%に(2023年4月23日)
同報告書は、1.5℃シナリオ達成による経済、雇用、福祉への影響を分析したもの。1.5℃シナリオを達成した場合、既存のエネルギーシナリオ(PES)と比較して、2050年までにGDPの年平均1.5%増加、エネルギーセクター全体で現在の3倍の4,000万人の雇用創出する可能性があるとした。
地域や国毎にエネルギー転換による恩恵に格差が生じるため包括的な経済戦略の必要性を主張。再生可能エネルギー部門の雇用の地域ごとの割合は、アジアが55%、ヨーロッパが14%、アメリカ大陸が13%で、サブサハラ・アフリカの雇用は現状9%しかない。
(出所)IRENA
アフリカの一人当たりGDPは今後倍増する見通しだが、資源が豊富なアフリカ諸国は急成長を遂げると予想されており、地域間の格差がより悪化する可能性が高い。そのため、発展途上国への積極的な支援が必要とした。
同報告書では、エネルギー転換の社会・経済的な成長と技術や規制を統合するためには、化石燃料から脱却し再生可能エネルギーへの転換を支援するだけではなく、長期的なエネルギー政策と他分野の政策との一貫性が必要と主張。エネルギー転換を実現するメリットは、ダイバーシティ・インクルージョンへの配慮を含む社会全体の福祉を改善する可能性があるとし、福祉指数で評価を実施した。
(出所)IRENA
福祉指数は、経済、社会、環境、再分配、アクセスの5つで構成され、それぞれ2つのサブ指標を持つ。全体スコアでは1.5℃シナリオ達成時のほうがスコアが高い結果となった。指標別では社会と再分配の指標のポテンシャルが大きいため、この2つに焦点を当てた政策の展開の必要性を訴えた。
(出所)IRENA
【参照ページ】Accelerated Energy Transition Can Add 40 million Energy Sector Jobs by 2050
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