国連環境計画(UNEP)、国際環境NGOグローバル・キャノピー、土地劣化の経済学(ELD)の3者は12月9日、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)の場で、自然を軸としたソリューション(NbS)への世界のファイナンス状況を分析した報告書「自然のためのファイナンス状況(State of Finance for Nature)」の第3版を発行した。大幅な資金動員不足と警鐘を鳴らした。
ELDは、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)、国連砂漠化防止条約(UNCCD)、欧州委員会が2011年に立ち上げた国際イニシアチブ。土地の真の価値を意思決定プロセスに組み込み、持続可能な土地利用を促進することを目的としている。今年からはグローバル・キャノピーも発行機関に加わった。
同報告書によると、2022年のNbSへのファイナンス総額は約2,000億米ドル。一方、自然を直接害する事業への資金フローはその30倍以上の7兆米ドルあり、世界のGDPの約7%に相当する。結果的に、自然状況は大幅に悪化。気候変動、生物多様性の喪失、土地劣化という相互に関連する危機に対処する緊急性を強調した。
民間ファイナンスに絞ると、NbSへのファイナンス総額は350億米ドル。一方、自然を直接害する事業への資金フローが5兆米ドルもあり、その差は140倍。建設、電力、不動産、石油・ガス、食品・タバコの5つの産業は、経済全体の資金フローの16%を占めており、森林や湿地、その他の自然生息地の破壊に関連する自然破壊的な資金フローでは43%を占めている状況。
公的ファイナンスでは、農林水産業と化石燃料に対する、環境に有害な補助金が、2022年には1.7兆米ドルに上ると推定。消費者に対する化石燃料補助金だけでも、2021年の5,630億米ドルから2022年には1兆1,630億米ドルと倍増した。
同報告書は、パリ協定と昆明-モントリオール生物多様性枠組みを達成するためには、NbSの資金フローが2030年までに現状の3倍の年間5,420億米ドル、2050年までに現状の4倍の7,370億米ドルに増やす必要があるとした。さらに、NbSでの民間ファイナンスの割合も現状の18%から2050年までに33%にまで増やすことを目安として示した。
同報告書は、NbSへの資金フローを増やすだけでなく、自然破壊型の約7兆米ドルのファイナンスを劇的に削減することとが最も重要と伝えた。
【参照ページ】Global annual finance flows of $7 trillion fueling climate, biodiversity, and land degradation crises
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