
金融安定理事会(FSB)は7月18日、自然関連金融リスクの特定と評価に関する各国金融当局の現状整理施策を整理した。複数の金融当局がすでに自然関連金融リスクについての政策検討を開始していることがわかった。7月25日からリオデジャネイロで開催されるG20財相・中央銀行総裁会合に提出される。
FSBには現在、24カ国・地域の金融当局が加盟している。今回の報告書は、FSBの独自調査の他、環境リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)が開発した「自然関連金融リスクに関する概念フレームワーク」、また経済協力開発機構(OCED)やEUが資金拠出して実施された自然関連リスクに関する分析等を踏まえ、全体像がまとめられた。
同報告書によると、新興国・先進国を問わず、多くの当局がすでに規制・監督上の施策を始めている模様。具体的には、EUの欧州中央銀行(ECB)や欧州委員会、フランス健全性監督機構(ACPR)、ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)やドイツ連邦銀行、イタリアのイタリア銀行や保険監督局(IVASS)、スペイン銀行やスペイン財務省、オランダ銀行、シンガポール通貨監督庁(MAS)、スイス連邦財務省国際金融問題局(SIF)、ブラジルのブラジル中央銀行、中国の中国人民銀行や国家金融監督管理総局(NFRA)等を挙げた。
一方、各当局の政策は初期段階にあり、内容についても大きな差がある。すでに重大な金融リスクがあると結論付けている当局もあれば、この問題に関する国際的な作業をモニタリングする段階にとどまっている当局もある。データギャップや、気候変動リスクに十分な優先順位を与える必要性(分析的思考やデータがさらに進展している場合)を理由に、本格化を先送りしているところもある。
分析が進んでいるところでは、自然関連金融リスクを、気候関連金融リスクと同様に、物理的リスクと移行リスクという2つのタイプに分類しているところが多い。その中で、金融機関は、投融資を通じて物理的リスクに対する大きなエクスポージャーを抱えていることが全体的には示されているが、金融エクスポージャーの推計をより適切にリスク測定に反映させるためには、主要なデータとモデリングの課題に直面している状況にある。
金融当局の初期政策では、会社に対し自然関連財務リスクの情報開示を促進することが典型的。また、金融当局、中央銀行、企業のいずれにも専門人材が不足しており、世界各国でキャパシティビルディングが進められていることもみえてきた。
【参照ページ】FSB takes stock of the wide range of regulatory and supervisory initiatives on nature-related financial risks
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