
欧州自動車工業会(ACEA)は9月19日、電気自動車(EV)の新車販売シェアが縮小傾向にあることを受け、欧州委員会に対し、緊急要請を発表した。EV市場を成長させるために必要な政策措置を発動するよう求めた。
ACEAの発表によると、8月の新車販売EVシェアは、14.4%で前年同期比の21%から大きく減少。2023年にはほぼ一貫してシェアが増加していたのに対し、直近では4ヶ月連続でシェアが減少している。プラグイン・ハイブリッド(PHV)車の新車販売台数も7.4%から7.1%へと減。ガソリン車とディーゼル車の合計シェアも45.1%から44.3%へとわずかに減少している。反対にハイブリッド車(HV)が24%から31.3%へと増加している。
ACEAは今回、欧州の自動車業界は、パリ協定とEUの2050年輸送カーボンニュートラル目標の達成を支持し、EVに数十億米ドルを投資し、自動車を市場に投入してきたと強調。自動車技術とゼロエミッション車の入手可能性はボトルネックではなく、EVシェア減少の原因は他にあると伝えた。
具体的には、EV充電インフラや水素補給インフラ、競争力のある製造環境、手ごろな価格の再生可能エネルギー、購入や税制上の優遇措置、原材料や水素、バッテリーの安定供給等が原因とした。経済成長、消費者の受容、インフラへの信頼も十分に発展していないと伝えた。
ACEAは、「現行の規則のままでは、過去数年間の地政学的・経済的情勢の大きな変化を考慮しておらず、現実世界の発展に合わせて調整することができない法律特有の性質が、この分野の競争力をさらに低下させている」と表現。物価高騰や自国市場から中国製EVを締め出すために展開されているEV関税等によって、EV市場全体が向かい風になっており、政策介入が必要との考えを示唆した。
さらにACEAは、EUが政策目標として掲げている自動車とバンの2025年燃費目標の達成が危ういと認識。2025年の目標が未達成だった場合の制裁金が科されれば、さらにEV市場の拡大に回す企業の原資が損なわれるとの見方も伝えた。
そこでACEAは、現在2026年と2027年に予定されている小型車と大型車の燃費規制の見直しを、2025年に前倒しするよう欧州委員会に要請。目標値の引下げも含めて検討すべきとした。特に大型車に関しては、トラックやバスのインフラ整備等の重要な条件を確実に間に合わせるためにも、早期の見直しが絶対に不可欠とした。
欧州自動車大手は、中国メーカーと比べ技術開発やコスト削減能力で遅れをとっており、市場競争力の高いEVを上市させることに苦しんでもいる。ACEAは今回の緊急要請の目的として、「ゼロエミッションへの移行を軌道に乗せ、欧州の産業の未来を確保するため」と説明。今後のEV市場の拡大や、欧州自動車メーカーの競争力向上のためには、欧州メーカーに課徴金を課すのではなく、むしろ支援すべきと要請した。
【参照ページ】European auto industry calls for urgent action as demand for EVs declines
【参照ページ】New car registrations: -18.3% in August 2024; BEV market share down by almost one third
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