
環境省は9月27日、「持続可能な窒素管理に関する行動計画」を策定した。政策の方向性を定めた。
今回の行動計画は、国連環境総会(UNEA)の決議を踏まえたもの。UNEAでは、2019年に持続可能な窒素管理に関する決議が採択され、地球規模の窒素循環に関する政策の調整の改善を促進する選択肢を検討することが決定。さらに2022年の同決議で、過剰なレベルの栄養素、特に窒素及びリンは、水、土壌、大気質、生物多様性、生態系の機能等に影響を及ぼすことに留意し、加盟国に対し、2030年までとそれ以降に、廃棄窒素を世界的に顕著に削減するための行動を加速させることや、国家行動計画の情報を共有することを奨励していた。
窒素循環の主な物質はアンモニア。日本における窒素循環では、産業用途の窒素は、アンモニアが中心で、輸入窒素が約550万t。大気窒素の固定が約99万t、廃棄処理段階でリサイクルされた窒素が約29万t。産業からエネルギーに移行する窒素は、370万tあり、そのうち約78万tが反応性窒素として大気へ排出されている。特に、窒素化合物(NOx)は大気汚染物質、一酸化二窒素(N2O)は温室効果ガスとなる。
作物生産・草地に投入される肥料中の窒素は約79万tあり、そのうち約14万tが反応性窒素として大気へ、約36万tが水系へ排出されている。水系流出の窒素は、富栄養化の原因となる。家畜生産に投入する飼料における窒素は約87万t。そのうち約31万tが堆肥、約17万tが製品として産業に戻り、約18万tが反応性窒素として大気へ排出されている。
消費者に移行する窒素は約110万tあり、そのうちの約66万tが廃棄物及び下水に移行し、約1万tが反応性窒素として大気へ、約37万tが水系へ排出されている。
2019年時点で、世界のアンモニア生産量は約2億t。そのうちの約32%が東アジアで生産されている。日本におけるアンモニア消費量は、2019年時点で約108 万t。世界のアンモニア生産量の約0.5%を占めている。このうちの約8割が国内生産、約2割をインドネシアやマレーシアから輸入している。
同計画では、火力発電、工業炉、船舶での燃料、もしくは水素キャリア等の用途でのアンモニア等の需要が拡大することが見込まれることから、NOxやN2Oの排出量を増加させない技術等の活用や開発・導入を促進するとした。電動車等のよりクリーンな自動車への代替を促進することも掲げた。
農業分野では、窒素肥料の使用量の低減、作物の成長段階に合わせた肥効技術、肥料の効率利用に向けた硝酸化成の抑制、脱窒反応の促進、N2O抑制技術の開発・普及に取り組むとした。こちらは農林水産省のみどりの食料システム戦略が政策の柱となる。食料品の廃棄に伴う窒素の過剰な環境排出も低減する。排水処理でのアンモニア回収や下水汚泥資源の肥料利用も掲げた。
下水及び排水の処理や廃棄物等の焼却による排出では、実態調査による知見の収集や燃焼の高度化等の N2発生抑制技術の実用化及び普及を促進する。また、下水処理場の能動的運転管理、藻場・干潟の保全・再生等による豊かな海づくりも盛り込んだ。
窒素管理では、「持続可能な窒素管理に関する関係省庁連絡会議」に関し、環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、厚生労働省の5省が構成員となっている。
窒素循環分野での国際展開では、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)やアジア水環境パートナーシップ(WEPA)等の既存の国際協力の枠組を活用し、日本の知識・経験の国際展開、行政官の能力構築等を推進する。また、大気環境と気候変動のコベネフィット事業やアジア水環境改善モデル事業にも結びつけていく。
【参照ページ】「持続可能な窒素管理に関する行動計画」の策定について
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