
生物多様性のためのファイナンス財団(FfB)は10月2日、MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)採用銘柄2,300社以上を対象とした包括的な生物多様性フットプリント評価を完了したと発表した。同様の評価実施は今回が初。
FfBは2023年、今回の調査に向けたパイロット調査を実施。生物多様性の企業評価ツール「BIA-GBS」「BFFI」「CBF」「GID」の4つを用いて、インパクトの観点から生物多様性への悪影響の多い企業250社を特定。さらにセクター毎にグループ化し、セクター毎の悪影響ランキングにまとめた。その結果、悪影響を与えている順に、食品、石油・ガス・消費燃料、化学、消費財・小売、金属・採掘、製薬、ヘルスケア、自動車、商社となっていた。また、MSCI Worldの構成銘柄1,564社のうち、上位250社で生物多様性への悪影響の73%を占めていることもわかった。
今回の調査は2024年1月に開始。分析対象企業の範囲を新興国にまで広げるため、今度は「MSCI ACWI」の採用銘柄と、MSCI ACWIに入っていないがNA100の対象となっている企業を分析対象に設定。それら全体2,369社から悪影響の大きい250社を特定した。また、パイロット調査で実施したインパクトの評価に加えて、依存度評価も行った。インパクト評価では、業界単位の分析だけでなく、個別企業毎の状況までを考慮し、影響を算出した。
【参考】【国際】機関投資家団体NA100、生物多様性分野のエンゲージメント対象100社発表。日本企業も5社(2023年9月27日)
今回の調査では、生物多様性への悪影響は、上位10社で15%。上位50社で38%、上位100社で49%、上位250社で67%を占めていた。このことから、一部の企業だけに絞り込んでエンゲージメントを行っても、ポートフォリオ全体に十分大きな成果を得られることがわかった。
悪影響セクター別ランキングでは、食品、石油・ガス・消費燃料、化学、消費財・小売、金属・採掘、電力、商社、製薬、飲料、ホテル・外食・レジャーの順。上位5位まではパイロット調査と同じだった。
依存度の調査では、依存度上位10社のうち、9社が食品セクター、1社は飲料セクターだった。MSCI ACWI採用銘柄全体では、地下水・地表水、次いで土壌安定化・浸食防止、濾過、洪水・暴風雨対策、水流維持等の調整サービスへの依存度が高かった。スコープ3の上流サプライチェーン部分に重大な依存関係が生じていることも明らかになった。
また気候変動への対応だけでは生物多様性の損失を食い止めるには不十分とも指摘。MSCI ACWI採用銘柄における生物多様性喪失の直接要因を高い順に並べると、気候変動が34%、汚染が31%、土地利用が23%、水利用が12%だった。
FfBは今回、生態系サービスへの依存度が高い企業は、それ自体がネガティブであるとは限らないことも強調した。依存度が高くてもリスクが低ければ、企業に与える悪影響は小さい。そのため、生態系サービスの供給量以下に需要を抑制すること等の適切な対策を講じることが肝要とした。
【参照ページ】FfB Foundation publishes the updated Multi Tool study tracking top biodiversity companies and industries
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