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【EU】欧州委、EUDRの適用1年延期を提案。「低リスク国」も大半に。実効性確保へ

 欧州委員会は10月2日、すでに成立している森林破壊・森林劣化規則(EUDR)の義務適用開始日を12ヶ月間遅らせる政策を発表した。EU理事会及び欧州議会に対し、EU法改正を2024年12月30日までに改正するよう要請した。

【参考】【EU】森林破壊・森林劣化規則が成立。7品目にデューデリ義務。猶予期間は18ヶ月。違反時は巨額罰金も(2023年5月18日)

 同規則は、パーム油、牛(牛肉・牛皮革等)、木材(紙パルプ含む)、コーヒー、カカオ、ゴム、大豆及びそれらの関連製品を、EU市場に流通、提供、輸出する全事業者、貿易業者に対し、原材料の生産地にまでトレースするデューデリジェンスの実施を義務化している。

 義務化の適用対象は、EU市場に対象7品目を最初に流通、提供、輸出する事業者(オペレーター)と、すでにEU市場で流通している対象7品目を取り扱う流通事業者(トレーダー)。適用時期は2024年12月30日だが、中小企業のトレーダーは2025年6月30日となっている。中小企業の定義は、「従業員250人未満」「年間売上5,000万ユーロ未満」「総資産2,500万ユーロ」未満のうち2つを満たす企業。また、中小企業に関しては、大企業がデューデリジェンスをすでに行ったものを取り扱う場合には、デューデリジェンスを行う義務が免除される。

 欧州委員会は今回、適用時期を2025年12月30日、中小企業のトレーダーは2026年6月30日に延期する意向を発表。背景には、複数の「グローバル・パートナー」が、準備状況に繰り返し懸念を表明していることや、EU域内でも関係者の準備状況にもばらつきがあることを挙げた。一方、法の目的や中身に関しては後退させず貫徹する意思も語った。

 また今回の政策ガイダンスでは、EUDR上で曖昧となっていた用語や概念の定義も明確化。具体的にはオペレーターやトレーダーの定義を詳細化し、合法性要件、適用期間、農業利用、製品範囲も明確化している。また認証製品を活用することでデューデリジェンス要件を満たそうとする場合の要件も明確にした。

 欧州委員会は、今回同時に、EUDRによる国際協力の枠組についても原則案を公表した。EUDRに関しては、EUへの輸出が阻害されるというの経済打撃を懸念する声も上がっており、欧州委員会としては、企業取引では厳しいデューデリジェンスを課しつつも、発展途上国の農林業に対する国際支援を強化していくという考えにあることを説明した形。

 特に、企業のデューデリジェンス義務では、「低リスク」に分類される国からの輸入については、すでに事業者単位でのリスク情報を認識していない場合には、リスク評価義務が免除されることになっており、「低リスク」の扱いが非常に重要になってくる。そこで欧州委員会は、各国のリスク分類の判定手法を明確化。主に、世界の総森林減少量の平均を考慮し、絶対的な森林減少量(年間森林減少ha)と相対的な森林減少量(年間森林減少量の割合)の両方をが基準値を超え、加えて農地の拡大面積と拡大面積率、木材及び畜産の生産量でも基準を超えていた場合に「追加評価」もしくは「高リスク」とし、それ以外の場合は「低リスク」と分類することを表明した。 (出所)欧州委員会

 欧州委員会によると、この手法を採用した場合には、世界の大多数の国が低リスクに分類されることになるという。欧州委員会としては、リスク対象国を絞り込むことで、「森林減少の問題がより深刻な地域の森林保護に総力を挙げ、資源を集中させることができる」と言及。リスクの全体の底上げよりも、一部の高リスク国に対策を集中させる方をとった。国のリスク分類については、2025年6月30日までに立法措置により最終化させる考え。

 オペレーターが、デューデリジェンス報告書を登録する情報システムについては、11月上旬に登録受付を開始し、12月に本格稼働する。オペレーターやトレーダーは、法律の適用前でもデューデリジェンス報告書を登録・提出できる。利用研修も提供していく。

 国際環境NGO世界資源研究所(WRI)は、欧州委員会の今回の発表に関し、実施時期が延期されることに失望を示しつつ、実質的なルールは維持したことに一定の評価を下した。

【参照ページ】Commission strengthens support for EU Deforestation Regulation implementation and proposes extra 12 months of phasing-in time, responding to calls by global partners 【参照ページ】STATEMENT: The EU Deforestation Regulation Should Not be Delayed

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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