
持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は9月23日、金融機関向けの森林破壊に関する情報を財務情報開示に統合する方法に関するガイダンスを発表した。
同ガイダンスは、金融機関が自社の気候及び自然資本関連の財務情報開示や、気候変動対策計画に森林破壊を含めるための実行可能な4つのステップを提示したもの。米国務省が設立し、WBCSDが主導する「森林金融リスクコンソーシアム(FFRC)」が作成した。
森林破壊やその他の土地利用の変化は、世界の生物多様性の損失の原因の30%を占める。農業、林業、その他のセクターの土地利用が世界的な温室効果ガス(GHG)排出の主な要因となっている。例えば、農業や食品セクターへの融資を通じた森林破壊に関与する企業へのエクスポージャーの増加は、金融機関における気候や自然に関連する重大なリスクであり、関連する目標の達成を大幅に制限してしまう。
また、EUの森林破壊・森林劣化規則(EUDR)のように気候関連の情報開示を求める傾向が強まっていると指摘。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に従った開示義務を検討しているカナダ、マレーシア、シンガポール等でも同様の傾向にある。自然関連の情報開示では、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の影響力が大きいとした。
すでに銀行130社以上と運用会社315社以上がネットゼロ目標を掲げ、金融機関は自然環境に関する目標の設定を進めている。しかし、CDPを通じたポートフォリオにおける森林破壊リスクに関する情報開示を行っている金融機関は全体の13%しかない。
森林破壊リスクの評価と管理に関するデータや方針が散在していること、土地利用変化による温室効果ガス排出量の算定方法が明確でないことが原因の1つ。この課題に対しては、2025年にWBCSDと英環境NGOグローバル・キャノピーが「森林破壊ゼロ金融プラットフォーム」を、WBCSDと国際環境NGO世界資源研究所(WRI)が「土地セクター及び除去ガイダンス」をリリースする予定であり、今後整理されていく見通しとなっている。
【参考】【国際】SBTi、幅広い業種でFLAG目標設定を義務化。既存企業も承認再申請必須。製造業・小売も(2023年7月16日)
同ガイダンスでは、投融資先企業での森林破壊リスクを評価し、軽減するための措置を講じるための4つのプロセスを明示。森林破壊ゼロのポートフォリオとネットゼロ目標へのステップを示した。森林再生等の自然を軸としたソリューション(NbS)の、気候関連の物理的リスクやGHG排出量の削減、移行計画における役割についても論じた。
具体的な4つのプロセスは、「森林破壊ゼロの金融ガイダンスを採用し、金融セクターの共同イニシアチブに参加する」「森林破壊に特化した情報開示を通じて年次開示を行う」「気候及び自然環境関連の財務情報開示及び移行計画に森林破壊を組み込む」「包括的な情報開示を行う」。
【参照ページ】New guidance for financial institutions on why and how to integrate deforestation into financial disclosure
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