
金融世界大手米JPモルガン・チェースは11月14日、同社として初めて「エネルギー・ファイナンス・レシオ」を開示した。ニューヨーク市財務長官の呼びかけに応じ、3月に公表を約束していた。
【参考】【北米】シティとJPモルガン、クリーンエネルギー融資比率自主開示へ。ニューヨーク市要求(2024年4月5日)
「エネルギー・ファイナンス・レシオ」とは、化石燃料向けファイナンスを1とした場合のクリーンエネルギー向けファイナンスの量を表している。「グリーンファイナンス・レシオ」とも呼ばれている。またJPモルガン・チェースは今回、「エネルギー・サプライ・ファイナンス・レシオ(ESFR)」と呼称した。
ブラッド・ランダー・ニューヨーク市財務長官は3月、JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、カナダロイヤル銀行、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの北米大手6社に対し、エネルギー・ファイナンス・レシオの自主開示を要求。その後、JPモルガン・チェース、シティグループと、カナダロイヤル銀行の3社が自主開示に応じていた。バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの3社に対しては、その後、実際に株主提案が提出されたが、各々30%未満の賛成率にとどまった。但し、ゴールドマン・サックスは、欧州銀行監督機構(EBA)ルールに基づき、同様の比率を公表すると伝えていた。
JPモルガン・チェースが今回発表した2023年のエネルギー・ファイナンス・レシオは、化石燃料向けファイナンスを1とした場合、クリーンエネルギー分野へは1.29ドルだった。同社は算定方法論の詳細も開示し、ファイナンスには、法人ローンの他、プロジェクトファイナンス、減税目的投資、資本市場業務(証券業務)が含まれている。法人ローンに関しては、資金使途と目されるCAPEXやキャッシュM&Aの割合に応じて按分した。
同社は今回、ESFRの開示に関する説明として、銀行は競争市場で活動しており、エネルギー供給に利用可能な資金調達機会の絶対的または相対的レベルをコントロールすることはできず、政策メカニズムの導入、技術の進歩、消費者の嗜好の変化等、個々の銀行がコントロールできない様々な要因によって大きく左右されると言及した。
加えて、エネルギー分野への資金動員では、企業の内部留保、州・連邦政府、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ等を通じても提供されており、銀行が提供するファイナンスは、世界経済に電力を供給するエネルギー供給に携わる企業が展開する資本全体の一部を反映しているに過ぎず、ESFRと世界全体の状況は必ずしもリンクしないとの見方も示した。
また同社は、今回公表したレポートの中で、ファイナンスド・エミッションとファシリテーティド・エミッションの原単位と総量のデータ及び、原単位削減率もセクター別に公表した。
(出所)JP Morgan Chase
さらに、セクター別のクレジット・エクスポージャー、売上を分母とした原単位排出量、物理的リスクのマッピング結果も公表した。
(出所)JP Morgan Chase
同社は、2030年までに持続可能な開発目標向けファイナンスを2.5兆米ドル、そのうちグリーンファイナンスを1兆米ドルとする目標を掲げている。2023年までの累計実績では、グリーンファイナンスで660億米ドル、持続可能な開発目標向けファイナンスは1,940億米ドルだった。
【参照ページ】2024 Climate Report
【参照ページ】2024 Energy Supply Financing Ratio Methodology
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