世界経済フォーラム(WEF)は1月7日、グローバル協調度の年次評価レポート「世界協力バロメーター」の2025年版を発表した。昨年初めて発表され、今回が2回目となる。
【参考】【国際】世界経済フォーラム、「世界協力バロメーター」発行。リーダーにグローバル協調提唱(2024年1月9日)
世界協力バロメーターは、2012年にまで遡り、貿易・資本フロー、イノベーション・技術、気候・自然資本、健康・福祉、平和・安全保障の5つの柱で合計41の指標を評価し、グローバル協調の現状に関して報告したもの。さらに5つの数値を合計した総合指数も発表。コンサルティング世界大手米マッキンゼーと協働で作成している。
同報告書は、グローバルな協力関係が重大な岐路に立たされていることを強調。総合指数は、新型コロナウイルス・パンデミック以前の水準を上回っているが、停滞していると警鐘を鳴らした。特に、地政学的なリスクの高まりにより、世界の安全保障が著しく損なわれていることが大きく影響しており、「平和・安全保障」の指数が2022年よりもさらに悪化した。
(出所)
その他4指数では、過去と比較して着実に前進しており、国際協力の新たな機会が生まれているとした。イノベーション・技術では、半導体等の特定の最先端技術に関する地政学的競争が激化する一方、世界全体の協力関係が進展。新技術の採用、重要好物の供給の大幅な増加とリチウム電池の価格低下、留学意欲の回復も促進された。しかし、AI等の新興技術による急速な混乱がAIの軍備拡張競争を引き起こすリスクが高まっており、協調的なリーダーシップと包括的な戦略が重要だと指摘した。
気候・自然資本の協力関係は、過去1年間で改善し、太陽光発電、風力発電、電気自動車(EV)等の低炭素技術への資金流入と貿易が増加したと評価。しかし、世界全体の温室効果ガス排出量は増加し続けているため、ネットゼロ目標を達成するために、2030年までの気候目標の達成に向けた必要な技術の普及、資金確保に対する国際協力が不可欠とした。
健康・福祉では、全体的な進捗は2020年以前と比較して鈍化。国境を超えた支援や医薬品の開発は減少、健康関連製品の貿易や国際規制に関する協力も停滞しており、乳幼児及び妊産婦死亡率を含む複数の健康指標は依然として高い水準だと指摘した。健康リスクの高まりと人口の高齢化を踏まえ、公衆衛生と持続可能な保健システムの強化に向けた国際開発に投資すべきだと訴えた。
貿易・資本フローでは、中国やその他の発展途上国の成長鈍化により商品貿易は5%減少した一方で、サービス、資本、労働力のフローは増加。海外直接投資は、半導体やグリーンエネルギー等の分野を中心に急増、労働力や資金移動も回復し、新型コロナウイルス・パンデミック以前の水準を上回った。
同報告書では、激動の世界情勢を乗り切るための適応力と解決策を導くリーダーシップが求められていると結論づけた。競争が激化する中でも、国民の信頼と支持を維持するためには目に見える成果が必要であり、各国のリーダーは協力体制を構築する必要があるとした。
【参照ページ】Global Cooperation at a Crossroads: Possibility amid Rising Geopolitical Uncertainty
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