
英金融行動監督機構(FCA)は8月14日、金融機関のサステナブルファイナンス部門責任者向けのレポートを公表。サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)市場が成熟し、良い慣行と強固な商品構造が確立されてきていることを評価しつつ、信頼性確保には引き続き明確な基準設定、透明な目標管理、適切なガバナンスが不可欠と語った。
FCAは2023年、SLL市場に関するレビューを実施。市場の健全性、信頼性、インセンティブにおける課題等に関する懸念を示していた。具体的には、KPIやサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)が緩く設定されており、野心的ではない点や、目標の達成有無による金利変動が小さく、SLL活用による便益が、報告フレームワークの構築と遵守に要するコストで相殺されるため、インセンティブが低い可能性があると指摘した。
FCAは今回、銀行との対話の結果、一連の改善が見られたと分析。SLLで設定するサステナビリティ目標の妥当性と野心度では、KPIが借り手のビジネスモデルと密接に連携し、ビジネスモデルに対して重要かつ戦略的に意義のある少数の主要なSPTに焦点が当たるように変化したと語った。
またシンジケートローンでは、複数のサステナビリティ・コーディネーターの起用が一般的になり、KPIとSPTに対する精査が強化されている点にも注目。借り手によるSLL条項への違反や、ローン自体がSLL基準を満たさなくなった場合に、銀行が「罰則措置」としてSLLタクソノミーへの指定を解除した事例も挙げた。
改善がみられた背景には、ローン市場協会(LMA)のサステナビリティ・リンク・ローン原則(SLLP)が2025年3月に更新され、市場の基準を引き上げたことがあると分析。基準の引上げは、構造が不十分なSLLの排除に繋がるため、短期的には組成件数を減らす可能性があるが、借り手のサステナビリティ目標を支援する実行可能な手段としてSLLを確立するのに役立つと強調した。また、金融市場標準委員会(FMSB)の「サステナビリティ・リンク商品のガバナンスに関する優良事例声明」等、既存の基準やガイダンスを発展させる取り組みを歓迎した。
さらに、借り手がSLLに適しているかを銀行が評価した上で推奨する、より顧客中心のアプローチへの移行を進めている点も評価。借り手の目標が野心的でない場合や、ビジネスモデルにとって重要でない場合、SLL組成を拒否する銀行も出てきている他、将来的にSLL基準を満たせるよう、借り手と銀行の協働も見られるという。
但し、ディールチームやリレーションシップマネージャーは通常、SLLの適格性評価には関与しないものの、顧客関係が判断に不均衡に影響を与える可能性があるため、潜在的な利益相反に引き続き警戒するよう銀行に促した。
また、サステナビリティ・リンク商品を頻繁に発行する企業では、SPTが未達でもSLLの構造を維持して借り換えを行う場合があるが、目標が未達であることは、借り手を野心的な目標に結びつけるというSLL本来の目的を果たし、市場が成熟していることを示している可能性があるため、未達自体を一概に失敗と見なすべきではないと付言した。
その他、銀行がサステナビリティ・リンク商品に関する明確なガバナンスとエスカレーションプロセスを整備することの重要性にも言及。SLLの明確な理解と実践的な適用、チーム横断での強力な連携等の進展が見られた。
一方、銀行がサステナブル・ファイナンス目標においてSLLをどのように計上するかを明確に説明しない場合、風評リスクに晒され、SLLに対する信頼が低下する可能性があると指摘。FCAでは、銀行のサステナブル・ファイナンス目標におけるSLLの分類を規定しないものの、SLLが目標に含まれる方法や理由を説明し、実証できることが重要とした。
またFCAは、サステナビリティ目標の達成・未達に関わらず、融資に用いられる金利の変動がごくわずかであり、価格メカニズムの野心度が依然として低いことを課題視。また、中小企業にとっては、内部報告体制の構築や外部保証の取得にかかるコストが高いことや、融資額が小さいこと等を背景に、SLLの利用が進んでいないことを市場規模拡大の障壁として挙げた。
FCAは今後も、SLL市場の注視や銀行との建設的な対話を継続する姿勢。英政府の目標に沿ったトランジション・ファイナンスのハブとしての同国の競争力を高めるため、トランジション・ファイナンス協議会(TFC)と連携するとも語った。
【参照ページ】follow-up letter
【参照ページ】Sustainability-linked loans market: 2 years on
【参照ページ】Strategy 2025-2030
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