
世界保健機関(WHO)は9月18日、非感染性疾患(NCD)対策に関する報告書を発行。年間一人当たり3米ドルの追加投資をすることで、2030年までに最大1兆米ドル(約150兆円)の経済効果が見込めると発表した。
非感染性疾患には、心血管疾患(心臓発作や脳卒中)、がん、慢性呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患や喘息)、糖尿病等が含まれる。不安障害や鬱病等の精神疾患も、あらゆる国や地域で広く蔓延しており、全年齢層・所得層に影響を及ぼしている。
同報告書は、9月25日に開催される「非感染性疾患の予防・管理ならびに精神的健康とウェルビーイングの促進に関する第4回国連総会ハイレベル会合(HLM4)」に先駆けて作成されたもの。同会合では、NCDと精神的健康で野心的な政治宣言の採択が期待されている。
NCDは世界の死因の大半を占めており、精神疾患は10億人以上いる。特にNCDと精神疾患関連の死亡の約75%が低・中所得国で発生し、死者数は年間3,200万人に上る。一方で、2010年から2019年にかけ、82%の国では死亡率が低下したものの、60%の国で進捗ペースが大幅に鈍化。一部の国ではNCD関連死亡が再増加する事態さえ生じているという。
改善が進んでいる国としては、デンマークを筆頭に、韓国、中国、エジプト、ナイジェリア、ロシア、ブラジル、モルドバを挙げた。最大の改善要因は、心血管疾患および特定の癌(男女ともに胃癌、大腸癌、女性では子宮頸癌・乳癌、男性では肺癌・前立腺癌)の減少で、反対に、膵臓癌、肝臓癌、神経疾患は多くの国で悪化している。
WHOは、非感染性疾患を予防・管理するために各国が実施できる29の効果の高く手頃な対策を特定し、「ベストバイ」と呼称している。「ベストバイ」には、たばこ、アルコール類、糖分含有飲料への課税、予防・早期発見・治療のためのプライマリ・ケア、有害なマーケティングからの子どもの保護、必須医薬品・技術へのアクセス拡大、国内予算・保健税・対象限定援助による資金確保、野心的な目標設定と進捗状況の追跡、健康政策への業界干渉の阻止等がある。各国政府は、これらを状況に応じて組み合わせて実行すべきとしている。
同報告書は、ベストバイの投資対経済効果は、2030年に4倍、2035年には7倍にまで増大すると強調。ベストバイ別では、非健康的な食事対策で14倍、アルコール類の消費削減で9倍、禁煙で7倍、運動不足の解消で4倍とした。また健康インパクトでは、2030年までに完全実施すれば、死者数が1,200万人減、心筋梗塞・脳卒中疾患数を2,800万件減、健康寿命を1億5,000万年を延伸できるとした。
必須医薬品に関しては、WHOは9月5日、「必須医薬品モデルリスト(EML)」と「小児用必須医薬品モデルリスト(EMLc)」を改訂。各種の癌治療や、肥満等の併存疾患を伴う糖尿病治療の新規治療法が追加されている。他にも、嚢胞性線維症、乾癬、血友病、血液関連疾患の治療薬が追加された。
【参照ページ】WHO urges cost effective solutions on NCDs and mental health amidst slowing progress
【参照ページ】WHO updates list of essential medicines to include key cancer, diabetes treatments
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