
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は6月8日、世界の過剰生産能力がEUの鉄鋼市場に及ぼす貿易上の悪影響に対処することを目的としたEU規則案を採択した。同EU規則案はすでに欧州議会を通過しており、同EU規則は成立した。7月1日から適用される。
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、鉄鋼産業保護のEU規則案で政治的合意。輸入割当約半減等(2026年4月18日)
同規則は、6月30日に期限が切れる現行のEU鉄鋼セーフガード措置に取って代わるもの。世界の過剰生産や産業の海外移転からEUの鉄鋼部門を保護するための新たな枠組を導入すると同時に、EUの国際貿易上の義務を履行しつつ、下流産業を含む経済事業者にとって十分な柔軟性を確保する。
EU理事会は今回、鉄鋼の過剰生産能力が2027年までにEUの年間消費量の5倍以上に相当する7億2,100万tに達すると予測。さらに第三国が実施している輸入制限も相まって、EU市場は世界の余剰鉄鋼の主な受け皿となっていると警鐘を鳴らした。現在、EUでは、鉄鋼輸入の増加、低い設備稼働率(2024年は67%)、EUにおける製造コストの高騰を招いており、最終的にはカーボンニュートラル化への投資を行う産業の長期的な能力を脅かしていると危機感を示した。EUでは2007年以降、約6,500万tの生産能力と最大10万人の雇用が失われているという。
今回のEU規則は、まず、EUへの鉄鋼輸入を規制する関税割当(TRQ)制度を改訂。新制度では、鉄鋼輸入割当の総量を2024年のセーフガード割当(年間1,830万トンの輸入量)と比較して約47%削減し、割当超過関税を50%に引き上げた。伝統的な供給国に対する管理された市場アクセスを維持しつつ、中国を念頭に過剰な輸入を抑制する。
また、割当の管理および輸出国間の配分に関する事項も明確化する。すべての製品カテゴリーを対象に、同一年度内に限り、未使用の輸入割当量を次の四半期に繰り越せるようにした。2年目以降は、欧州委員会が特定の基準に基づき、特定の製品カテゴリーについて、制度の適用当否を決定する。
さらに、制度迂回を防止し、サプライチェーンの透明性を高めるため、第三国への割当枠を配分する際の要素の一つとして「溶解・鋳造原則」規定も導入された。これは、鉄鋼が最初に溶解・鋳造された国、すなわち、炉内で液状の状態で最初に生産され、その後最初の固体形状に鋳造された国を特定。欧州委員会は2年以内に、国別関税割当の算定基準として「溶解・鋳造国」を指定するかどうかを評価し、必要に応じてその旨の新たな立法案を提出することとなった。
EU鉄鋼セーフガード措置の対象となる製品範囲のレビューについては、期限付きのレビューメカニズムを設けた。具体的には、同規則の発効から6ヶ月以内に、欧州委員会が、範囲を管・パイプ、特定の種類の線材および鍛造棒鋼を含む追加の鉄鋼製品に拡大すべきかどうかを評価し、適切と判断した場合には法改正を提案する。2回目の見直しは12ヶ月以内に行われ、欧州委員会が、市場動向および回避のリスクの可能性に照らし、特に鉄鋼製または多量の鉄鋼を含む製品に関して、さらなる調整が必要かどうかを評価する。その後、2年毎に順次適用範囲のレビューを実施する。
【参照ページ】Steel overcapacity: Council greenlights new rules to protect the EU steel market from global overcapacity
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