
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は3月5日、強制労働に関与して製造された製品のEU域内での販売及びEUからの輸出を禁止するEU規則案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。
今回の合意では、強制労働に関する調査を行う主体として、EU域外の事案については欧州委員会が、EU域内の事案についてはEU加盟国が主導することを規定。加盟国当局が同規則違反の可能性を評価する過程で、強制労働の疑いに関する新たな情報を発見した場合、強制労働の疑いがEU域内で行わている場合には、他の加盟国当局に報告することを義務化。強制労働の疑いがEU域外で生じている場合は、欧州委員会に報告しなければならない。
強制労働の評価については、リスクアプローチを採用し、実際に強制労働に関与しているか否かが確認できなくても、リスクが高いと判断されれば関与していると判断される。評価では4つの観点を設ける。
- 国家による強制労働が懸念されるかどうかも含め強制労働の疑いの規模と深刻さ
- EU域内に出回る製品の量または数量
- 最終製品に占める、強制労働によって製造されたと思われる製品の部品の割合
- サプライチェーンにおける強制労働の疑いのあるリスクと、それに対処するための経済事業者の影響力の近さ
強制労働の調査を支援するため、欧州委員会は、国際労働機関(ILO)等の国際機関からの報告も含め、強制労働リスクに関する検証可能で定期的に更新される情報を含むデータベースを構築する。
また欧州委員会は、事業者及び当局が同規制の要求事項を遵守するのを支援するため、さまざまな種類の強制労働を終結させ、是正するためのベストプラクティスを含むガイドラインも発行する。同ガイドラインには、中小零細企業向けの付随措置も含まれる予定。
欧州委員会が強制労働関与と判断した場合、全てのEU加盟国で流通と輸出が禁止される。同様に、EU域内事案でEU加盟国が制労働関与と判断した場合にも、全てのEU加盟国で流通と輸出が禁止される。
強制労働関与で製造された製品については、廃棄が原則だが、サプライチェーン上の供給リスクがある場合には、廃棄ではなく、強制労働関与がなくなったことを証明するまでの期間、製品の保留を命じることができる。また、製品の一部の部品が強制労働関与と判定され、当該部品が交換可能な場合には、部品のみが廃棄対象となり、それ以外の部分については廃棄は課されない。
【参照ページ】Council and Parliament strike a deal to ban products made with forced labour
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