
環境に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「環境リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)」は5月7日、気候変動リスクの短期シナリオを発行した。短期シナリオの発表は今回が初。
同シナリオは、今後5年間という時間軸で、各国政府の気候変動政策、異常気象、経済トレンド、セクター毎の産業転換等を整理。特に、ファイナンスの時間軸が比較的短期の銀行融資(バンクローン)にとって重要な発表となった。
シナリオ策定では、経済・エネルギー・環境でのシミュレーションツール「GEM-E3」、経済のストック・フロー・モデル・ツール「EIRIN」、気候クレジットリスクモデル・ツール「CLIMACRED」を活用。その結果、4つの短期シナリオが作成された。
- パリへのハイウェイ;:技術主導の(秩序ある)移行が徐々に進展。
- 突然のモーニングコール:気候への無関心が蔓延していた消費者や投資家が、一気にグリーン嗜好に転換。
- 食い違う現実:先進国のみが「パリへのハイウェイ」を展開。
- 災害と政策の停滞:2026年と2027年に発生する一連の地域特有の異常気象が、資本破壊、生産性と生産の低下を誘引
各シナリオの結果では、今後5年間という時間軸でも、「突然のモーニングコール」と「食い違う現実」は、GDPの押下げ効果と失業率の押上げ効果が大きく、経済指標にとって望ましくなかった。一方、「災害と政策の停滞」は、今後5年間ではまだ経済打撃は小さいが地域毎に差が出る。
(出所)NGFS
NGFSは今回、短期シナリオを踏まえたメッセージも発信。効果的な気候変動政策を、世界的に協調してテンポよく実施することで、ネットゼロ移行による悪影響を抑えることができると強調した。そのためには、カーボンプライシング価格の漸進的な引上げと、炭素税収入をグリーン投資に回す効果的なサイクルが重要とした。
一方、政策を突然展開した場合には、トランジション(移行)にかかる経済的コストを増大させ、さらなる金融ストレスを引き起こすと指摘。移行が遅れて突然に行われた場合、世界の生産高は1.3%減少し、失業率は1.3ポイント上昇する見通し。デフォルト率も、電力等の複数のセクターで大幅に上昇する。
また、異常気象が特定の地域で連続して発生すると、GDPに大きな損失ももたらすことがわかった。影響は世界全体に拡大し、デフォルト率は、高資本・高負債セクターで著しく上昇し、特に電力供給10ポイント以上上昇する。さらに、サプライチェーンリスクも高まり、生産減少とマクロ経済への悪影響を生み出す可能性があるとした。
NGFSは、米連邦政府機関が2月に相次いで脱退して以降も、結束を固めており、3月にインド準備銀行が主催したNGFSセミナーには60カ国以上から約200人の中央銀行及び金融当局が出席。また、2024年には新規で14機関が加盟している。
【参考】【アメリカ】連邦政府4機関、NGFS脱退。残る一つも脱退濃厚。ニューヨーク州は加盟継続見通し(2025年2月14日)
【参照ページ】NGFS Short-term Climate Scenarios for central banks and supervisors
【参照ページ】Strong NGFS member support for work to tackle climate risk
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