
国連食糧農業機関(FAO)は12月3日、初の「グローバル緊急・レジリエンス支援要請」を発表した。人道支援資源が逼迫する中、深刻化する急性食料不安へのより一貫性のある緊急対応に応じるよう求めるとともに、実証済みの解決策を通じて食料生産を保護し、将来の人道支援ニーズを削減するというFAO首脳陣としてのコミットメントを示した。
目下、食糧援助に対しては、主要ドナー国による大幅な予算削減の影響も受け、資金や物資が逼迫している。一方、2026年だけでもすでに短期的な支援が必要になっており、各国政府を含めたステークホルダーに対し緊急支援要請を発出した形。その中で、「加盟国主導、現実主導、需要主導、解決策主導、最も重要なコスト効率主導」の原則を掲げ、効率的かつ効果的な支援を実現していくこともあらためて表明した。
また、現在の人道支援資源の90%が長期化する緊急食糧援助に費やされているにもかかわらず、飢餓は増加し続けている。FAOは、深刻な食料不安に直面する人々の約80%が農村部に居住し、農業・牧畜・漁業・林業に依存している一方で、人道食料分野の資金のうち農業生計支援に充てられるのはわずか5%しかないと指摘。持続的な不均衡が家族を危機と依存の悪循環に陥れているという構造的課題を伝えた。そのため、短期的な支援だけでは持続的に解決できないことを強調し、将来に向けては、単なる食料支援にとどまらず、食料の入手可能性を高め、市場を支え、雇用を創出し、コミュニティを安定させることが肝要とした。
今回の支援要請では、人道支援とレジリエンス強化の全要請を単一枠組みに統合することで、緊急ニーズへの対応と並行し、将来の危機における反復的・高コスト支援の可能性低減を図る。2026年に54カ国・地域で1億人以上を支援するため25億米ドルの資金確保(約3,900億円)を目指す。
確保した資金の使途は、まず、6,000万人を対象とした命を救う緊急支援(種子・農具・家畜保健キャンペーン・生計手段の迅速な回復・現金給付)に15億米ドル。次に、4,300万人に恩恵をもたらすレジリエンス・プログラム(気候・生物多様性・食料安全保障に資する農業食品ソリューション、水インフラ、市場アクセス、農業食品システムの回復に重点)に10億米ドル。最後に、エビデンスシステム、食料連鎖脅威監視、予見的行動、人道支援・開発・平和の連携調整といったグローバル・サービスに7,000万米ドル。
FAOは今回、早期の農業支援は7倍の費用対効果をもたらすと強調。国連が2026年に発表予定の「グローバル人道概観」とも整合させ、機関間計画との一貫性を確保しつつ、FAOは農業分野における専門性と技術的深みを広範な人道対応に反映させていくとした。
【参照ページ】FAO’s new Global Emergency and Resilience Appeal seeks $2.5 billion to support 100 million people in 54 countries
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