
国際労働機関(ILO)は1月20日、3月に開催される専門家会合に先駆け、プロアスリートに対する「労働における基本原則および権利」と「暴力およびハラスメントの防止」を実効的に実現することを目的としたガイドライン案を発表した。同ガイドラインは、法的拘束力を持たないが、国際的な共通基準として、今後のスポーツガバナンスと労働政策の指針となることが意図されている。
今回のガイドライン案では、まずプロアスリートは雇用形態や競技の如何を問わず、競技活動によって生計を得ていることにより「労働者」と定義されると明記。人権や労働基本権の対象となる考え方を明確にした。
その上で、人権を構成する労働安全衛生の分野では、身体的安全だけでなく、精神的健康も含めた包括的な保護が求められていると指摘。過密日程、過剰トレーニング、SNS上の誹謗中傷、引退後の不安等、現代スポーツ特有のリスクが指摘され、予防的な健康管理体制、メンタルヘルス支援、データ保護、医療への自己決定権の尊重が重要とされるとした。気候変動による高温・異常気象への対応、ドーピング対策、緊急時対応計画の整備も内容に含めた。
さらに、暴力・ハラスメントに関しても、身体的・心理的暴力、性的ハラスメント、オンライン上の誹謗中傷、賭博に関連する脅迫等、スポーツを取り巻く暴力は多様化していることを踏まえ、明確な禁止方針、通報制度、被害者保護、調査と制裁の仕組を整備することが求められると伝えた。特にジェンダーに基づく暴力については、ILO第190号条約(暴力及びハラスメント条約)に基づく包括的対応を推奨した。
差別の撤廃では、性別、人種、障害、国籍、宗教、性的指向等に基づく差別を明確に否定し、同一価値労働同一賃金の原則を強調。特に、女子スポーツにおける賃金格差、投資不足、意思決定層への参画の少なさが問題視されており、制度的・文化的障壁の是正を求めた。また、妊娠・出産に伴う権利保障、育児休業、復帰支援等、女性アスリートのライフステージに配慮した制度整備の重要性も強調した。障害のあるアスリートについても、平等な機会の確保と差別からの保護が求められ、パラスポーツの発展や合理的配慮を推奨した。
児童労働では、過度な競技化や商業化により健康被害、教育機会の喪失、搾取が生じ得るとし、年齢制限、教育との両立、指導者の適格性、保護制度の整備を求めた。特にスポーツアカデミーや国際移籍に関しては、監督体制の強化と明確な保護基準の設定を不可欠とした。
強制労働では、移籍制限、登録制度、過度な違約金、移籍拒否等が実質的な強制労働につながる危険性があると指摘。特に国境を越える移籍や未成年選手の国際移動においては、人身取引や搾取のリスクが高いため、厳格な規制と監督が求めた。選手の移籍や国籍変更は本人の自由意思に基づくものでなければならず、報復的な練習強制や干し上げ行為(試合や活動から意図的に排除される行為)は禁止した。
結社の自由と団体交渉権に関しては、アスリートが自由に労働組合を結成・加入し、雇用条件や競技環境について集団的に交渉する権利を有することに言及。パートタイム選手や季節的選手も例外ではないとした。特に政府に対し、法制度整備と実効的な執行を求めた。使用者には組合活動への不当介入や報復を行わない義務が課されるとした。
同ガイドライン案は、これらの原則を実効性あるものとするため、各国政府、使用者団体、労働者団体が協力し、国内政策への反映、能力構築、データ収集、定期的な評価を行うことを要請。
【参照ページ】Draft ILO Guidelines for the promotion of fundamental principles and rights at work and the prevention and elimination of violence and harassment for professional athletes
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