サステナビリティ報告に関する国際ガイドラインのGRIが設立した、独立した基準設定機関のGlobal Sustainability Standards Board(グローバル・サステナビリティ基準審議会、以下GSSB)は3月1日、サステナビリティ情報のグローバルにおける比較可能性および質向上の一環として、現状のGRIガイドラインの中で使用されている用語をILO(国際労働機関)の基準に沿うよう見直しを進めていることを公表した。
政府、労働者、使用者の三者により策定されたILOの国際労働基準は、使用者の利益にも配慮しつつ、労働者の職業上の権利やディーセントワーク(働きがいのある・人間性を尊重した仕事)を促進するために定められたものだ。具体邸には、現在GRIは同ガイドラインにある"worker"と"employee"という用語を、ILO基準と整合のとれたより一貫性のあるものに修正することを検討している。
国際労働基準では、2006年に採択された「雇用関係勧告」第198号において、被用者と自営業者とを区別している。前者は通常、雇用関係と呼ばれる法的関係にあり、労働法が適用される立場として扱っており、後者は一般的な労働者という概念で扱われている。同基準では主として被用者の権利保護や偽装雇用対策に向けた各国の取り組みを推進しており、労働者の立場の明確化が重要となっている。
この件について検討するために、GSSBは2016年2月、ILOのHelpdesk for Business部のマネージャーを務めるEmily Sims氏、国際労働組合総連合(ITUC)の政策アドバイザーであるDwight Justice氏、国際使用者連盟(IOE)のアドバイザーを務めるAlessandra Assenza氏、そしてGSSBのメンバーから成る特別委員会を招集した。
なお、今後はOECD多国籍企業行動指針やISO26000など、その他のガイドラインとの整合性についても必要に応じて検討される予定だが、今回の範囲はあくまでemployeeとworkerとの同義語もしくは関連語(”young worker”など)の使い方の検証に限定されるとのことだ。
ILOのEmily Sims氏は「2つの用語をILOの基準と整合したものにする取り組みを歓迎する。基準全体に関する理解の共有や共通のアプローチ、そして持続可能な成長、持続可能な企業に向けたイニシアチブを促進させるには一貫性が重要だ。今回の検証により、GRI ガイドラインは企業がステークホルダーに対して、自社の労働者の権利保護がILOの基準に沿ったものであることを明示できる」と語っている。
今後、同プロジェクトは現在の報告基準の検証・見直しフェーズを経て草案が公表され、それに対するフィードバックを受けて最終案が承認、公表となる予定だ。
【参照リリース】GSSB to revise ‘Employee/Worker’ terminology for GRI Standards in line with ILO Standards
【団体サイト】GRI(Global Reporting Initiative)
【参照サイト】ILO R198 - Employment Relationship Recommendation, 2006 (No. 198)
【参照サイト】2006年の雇用関係勧告(第198号)
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