機関投資家の気候変動アクション・イニシアチブClimate Action 100+は10月2日、2017年の発足後初となる進捗レポートを発表した。同イニシアチブには現在、世界の機関投資家370機関以上が参画。運用資産総額は35兆米ドル(約3,700兆円)以上。二酸化炭素排出量の多い世界161社にターゲットを絞り、株主として排出量削減を要求する集団的エンゲージメントを進めている。161社は、世界の産業界からの二酸化炭素排出量合計の3分2以上を占め、時価総額合計は8兆米ドル(約855兆円)を超える。
【参考】【国際】PRIと機関投資家4団体、企業に気候変動情報開示を要求する「Climate Action 100+」発足(2017年9月29日)
【参考】【国際】投資家大手225機関、世界大手約100社に気候変動情報開示を要求。日本企業も10社(2017年12月14日)
【参考】【国際】機関投資家の気候変動団体Climate Action 100+、エンゲージメント対象企業を61社追加(2018年7月6日)
Climate Action 100+とのエンゲージメントの結果、過去7ヶ月以内に二酸化炭素ネット排出量を掲げた企業には、ネスレ、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ティッセンクルップ、アルセロール・ミタル、BHP、サンゴバン、デューク・エナジー、セントリカ、ハイデルベルグセメント等がある。しかし、同イニシアチブは、気候変動リスクを戦略的なビジネスリスクとして位置づけている企業は依然少ないと課題感も示した。
今回のレポートでは、活動の成果として、161社のうち70%は、長期的な排出削減目標を策定し、77%は、取締役会が気候変動対策についての明確な責任を持つことを定めた。シナリオ分析を実施した企業は40%。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインに基づく開示を公式に支持した企業は30%。一方、パリ協定での2℃目標と整合性のある削減目標を設定している企業は9%と少なく、パリ協定と整合性のあるロビー活動方針を策定している企業もまだ8%しかない。
成果を個別に見ると、ロイヤル・ダッチ・シェル、グレンコア、BP、エクイノールでは、株主と企業の間での気候変動対策合意をClimate Action 100+が主導。Climate Action 100+が、ロビー活動方針の策定を要請したことで、11社が応じた。バリューチェーン全体での二酸化炭素排出量「スコープ3」算出のメインストリーム化にも大きく貢献した。
また2年の活動の中で、Climate Action 100+に参加する機関投資家の数も65%増加し、参加機関の合計運用資産総額も9兆米ドル(約960兆円)増えた。株主総会での共同株主提案でも、賛成の議決権行使獲得も過去最大を記録。最近はアジア企業に力点を置いてきている中、日本企業については、同イニシアチブにも参加している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の推進もあり、大きな前進が見られると評価した。日本での集団的エンゲージメントでは、海外のアセットオーナーと日本の運用会社が対になってエンゲージメントを行う体制をとっており、日本の運用会社を教育する役割も果たしている。また、中国では中国石油天然気(ペトロチャイナ)に対し気候変動戦略を策定させることに成功している。
今回のレポートでの分析には、CDP、カーボントラッカー、Transition Pathway Initiative(TPI)、2° Investing Initiative(2ii)等の気候変動NGOも協力。科学的根拠に基づく削減目標設定イニシアチブ(SBTi)からもデータ提供を受けた。
【参照ページ】Climate Action 100+ investors seek net zero business strategies through company engagement
【レポート】CLIMATE ACTION 100+
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